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GA4(Googleアナリティクス4) を使ったアプリとWebの統合分析について


メグリでプランニングを担当している篠キチです。
前回のGA4を使ったアプリ計測に関する記事は思ってたより反応よくて、データストリームの追加方法やアプリ用GTMの件は個別に連絡いただいたりもして、やっぱりこの件は世の中に情報が足りてないんだなあと実感しました


今回はGA4の大きな特長でもあるアプリとWebの統合分析について、ちょっと書いてみたいと思います



アプリとWebのデータを同時に見られるGA4

このGA4の紹介ページには「ウェブサイトとアプリの両方のデータを収集することで、カスタマー ジャーニーをより詳細に把握」と書かれています。

実はGA4の前身であるユニバーサルアナリティクス(UA)でも同じプロパティにアプリとWebの計測データを入れることはできて、ビューでUser-IDレポートを使うことで横断的な分析に近いことは可能でした。
ただ、UAの場合はウェブサイトとモバイルアプリでビューの設定が異なり、Webとアプリのデータを同時に見ることができませんでした。

もはや懐かしいユニバーサルアナリティクスのビュー作成画面。
トラッキング対象データをウェブサイトにするかモバイルアプリにするかで、レポートの項目が異なっていました


GA4からは「ビュー」という概念はなくなっていますが、その代わりアプリとWebの分析データ(データストリーム)を1つのプロパティに入れることが最初からできるようになっています。

この作りであれば、UAではできなかったWebとアプリのデータを同時に見ることができそうです。確かにこれならカスタマージャーニーの把握ができるかもしれません。


Webとアプリの同じユーザーを、同じユーザーと認識できるか

しかし、Webとアプリのデータを同じプロパティに入れるだけでは、単にデータが混ざって見にくくなるだけで、何もいいことがありません。

統合して分析をしようと思うと、まず何よりもWebとアプリの同じユーザーを、きちんとGA4上で同じユーザーと認識できるようにする必要があります

このあたりの話は先日アユダンテ藤田さんをお招きして開催したウェビナーでも話題になっています(16:35付近から)

GA4上で同じユーザーとして認識できるというのは、ユーザーを識別できる何らかの情報がWeb・アプリどちらのデータストリームにも送られていることが条件になってきます。

これに関してはGoogleがGA4のヘルプ上で解説をしています

記事中では下記の4つの手段が挙げられています

  1. User-ID

  2. Google シグナル

  3. デバイス ID

  4. モデリング

2024/03/27追記
レポート用識別子の1つであったGoogleシグナルは2023/12/8に配信されたGoogle社からの「Google Analytics 4: Google signals will be removed from reporting identity on February 12th, 2024」というメールで廃止がアナウンスされ、実際に廃止されました。
現在GA4のレポート用識別子として利用可能なのはUser-ID、デバイスID、モデリングの3つになっています。
また、Googleシグナル自体がiOS14以降ではクロスデバイストラッキングの用途には使えないことがこのドキュメントに書かれています。


ユーザー識別子として何を使えばいいのか

先に挙げた4つについて考えていきますが、まず4. のモデリングは識別子が使えずユーザー特定ができていない状態を指しているので論外です。
また3. も実は今回の要件から外れます。なぜかと言うとWeb側のデバイスIDとアプリ側のデバイスIDが全く別物のID体系なので、これを使ってもWebとアプリの誰と誰が同じ人なのか全くわからないからです。

次に2. のGoogleシグナルですが、これもユーザーを特定する用途での利用は現状かなり難しいと考えています。

注:前述の通り、Googleシグナルはレポート用識別子としてGA4で利用することができなくなっていますが、結論は変わらないので記事や動画の内容はそのまま掲載しています。

Googleシグナルによるユーザー特定にはGoogleアカウントによるログイン状態の情報が使われていると言われていますが、具体的にどう特定されているかがよくわかっていません(Googleからも詳しい情報は出ていないと思います)

これに関しても先日アユダンテ藤田さんをお招きして開催したウェビナーで話題として取り上げました (42:52付近から)

また、Googleシグナルを使った場合にGA4上にデータが上がってこなくなる現象が出る場合があります。これはGoogleのヘルプにも解説があります

結果としてGA4でWebとアプリの統合分析をしようと思った場合、ユーザー識別子として利用できるのはUser-IDだけ、ということになります。


User-IDを使う場合の注意事項

具体的には下記のGoogleのヘルプに記載があります

まず、基本中の基本としてUser-IDの利用にあたってはGoogleアナリティクス利用規約を遵守している必要があります。
そこに書かれているこの一文が重要です。

Google が個人情報として使用または認識できる情報を Google に送信したり、第三者によるかかる行為を支援または許可したりしないものとします。

Googleアナリティクス利用規約より抜粋 
https://marketingplatform.google.com/about/analytics/terms/jp/

簡単に言うと、サービスでログインIDとしてメールアドレスや電話番号を使っているからといって、User-IDとしてそれを送っちゃダメよ、ということです。
(変更可能なメアドや電話番号をIDにすることがそもそも微妙ですが)

ついでに別サイトのデータとかと突合できるような共通IDみたいなのも送るんじゃねえ、と優しく言ってるような気もしますが、ここでは詳しくは触れないでおきます。内定辞退率の情報提供とかみたいなアレですかね…

GA4を使ってリマーケティング用のユーザーデータを抽出するなどの用途を考えると、User-IDは基本的に変更されない会員IDのようなものを使うべきでしょう。
受け取ったGoogle側が個人特定不可能な情報ということであれば、お店で使うポイントカードの番号などはその一例かと思います。


常時ログインさせることの重要性

前項で取り上げたGoogleが出しているヘルプにこのような記述があります。

User-ID の収集が不完全なセッションの扱い
ユーザーはサイトやアプリで、ログイン前やログアウト後にイベントを発生させることがあります。ログイン前に発生したイベントは、その後ユーザーがログインすれば、セッション ID を介してログイン時のユーザー ID と関連付けられます。ログアウト後に発生したイベントは、ユーザー ID と関連付けられることはありません。ユーザーがログアウトした時点で、イベントとユーザー ID との関連付けは停止します。

Googleアナリティクス ヘルプより抜粋 
https://support.google.com/analytics/answer/9213390?hl=ja&ref_topic=9303474#

GA4も標準ではUA同様にセッションは無操作時間30分でタイムアウトして終了する仕様ですが、セッション中にログインした場合は、同一セッション内のログイン前のイベントにも遡ってUser-IDが関連付けられると書かれています。
これはUAでのスコープ設定にあった「セッション」とほぼ同じ挙動と考えて良さそうです

ただここで重要なのは、若干いまさら感ありますがWebもアプリもログインしないといけないということです。そもそもアプリにログインする機能がなかったら、遡ってUser-IDを関連付ける以前の問題です。

アプリを使っているときもアプリ内ブラウザでWebサイトを開いたときも、どちらも確実にログインしてUser-IDを送ってもらわないとGA4上でデータを統合することができません。可能ならどちらも常時ログインしているのがベストです。

MGReは小売業向けの機能が充実していて、ポイントカードや会員証をアプリに表示する機能がもともと備わっているので、基本的に会員システムと連携して常時ログインをするのが前提になっています。
また、MGReは(というかメグリ社は)アプリ内ブラウザでECサイトへの自動ログインを実現するのが得意です。そのおかげでECサイトにも基本的に常時ログインした状態を作れています。
WebのデータストリームにUser-IDを送るのはWebサイト側で実装する話ですが、これもログインされなければ何も起きないので、アプリ内ブラウザでの自動ログインは非常に有効な策となります。

MGReのこれらの機能は、アプリを使われるお客様にスムーズでストレスのない体験をお届けするために作り込まれたものですが、実はデータ面でもシームレスな分析データの収集を可能にしているのです


Webとアプリの統合分析に何を期待しているか

さて、ここまでのお話でWebとアプリの統合分析には、統一したUser-IDでデータを収集できるようにすることが大切で、ついでにMGReがそれに適したアプリプラットフォームであることもご理解いただけたかと思います。

ここまでのことが確実にできていれば、GA4でWebとアプリの統合分析は可能になると言っていいんじゃないかと思います。
GA4自体の使い方がなかなか難しいという面もあるので、実際に分析するには相応のスキルが必要になってしまいますが、その部分はプロの手を借りるほうが確実かもしれません

(2023/07/03追記)
いまの時点ではUser-IDを使ったとしてもGA4のみでWebとアプリの統合分析をするのは難しそうです。「探索」機能にはUser-IDを使って抽出する方法が用意されてないようですし、統合分析用の機能も見当たりません。BigQueryやLookerStudioを使えることが大前提となりそうで、やはりプロの手を借りる方が無難かも知れません。

ただ僕の経験上、このWebとアプリの統合分析という言葉で具体的に何を思い浮かべるか、何ができると期待されているかという点が結構ズレていることがあると感じています。

この点について、僕は以下の2パターンがあると考えています


  1. Webやアプリを利用したときの行動データを1箇所にまとめ、各チャネルでどのような行動を取っていたかをユーザー別に見ることができる

  2. アプリの行動データと、アプリ内ブラウザでWebサイトを閲覧した行動データを一連のものとして収集・分析したい


GA4は明らかに1. を指向しています。紹介ページに「ウェブサイトとアプリの両方のデータを収集することで、カスタマージャーニーをより詳細に把握」と書かれていたことからもわかりますが、ユーザーを軸にしてどのチャネル(顧客接点) でどんな行動をして、最終的にコンバージョンしたのかどうか、そういったことを分析できるように設計されています。

そのためGA4にもUAと同じようにMeasurement Protocolが用意されていてWeb・アプリ以外のデバイスからのデータも取り込めるようになってますし、UAにはなかったタイプのオフラインデータを取り込む仕組みがGA4には追加されています。これも先日開催したウェビナーでアユダンテ藤田さんからお話がありました (38:32付近から)

これで同じ動画を3回見たことになるはずですが、そこは気にしないでください

これらはカスタマージャーニーの詳細を把握できるようにする、という点では強力な機能といえます。もはやGA4はWeb・アプリのデータ収集・分析にはとどまらない進化をしようとしている、と言っていいんじゃないかと思います。

ただ、その裏返しとしてGA4はユーザー特定ができない状況だとその真価を発揮しきれない、特に2.の「アプリの行動データと、アプリ内ブラウザでWebサイトを閲覧した行動データを一連のものとして収集・分析したい」という意味で横断的に分析しようとしたときに、今回のようなユーザー特定が前提となるやり方は、必ずしもフィットしないのでは? という感じがします。

こういったニーズに対してもGA4を活用する方法はあるのでしょうか。次回はそのことについて書いてみたいと思います。(まさかの第3部突入…)

追記

書きました


最後に宣伝

このnoteを見たらもうアユダンテ藤田さんのことは忘れられないくらい記憶に定着していると思いますが、ウェビナーの最後でも紹介させていただいたように藤田さんも共著で執筆されているGA4の入門書があります。GA4のことを一通り把握するには最適な内容だと思います。僕も購入しました

もう1冊、GA4のことを詳しく知りたいときにリファレンス本として机の横に置いておくことをオススメしたい本がこちら


あと、GA4を使った分析にプロの手を使った方がいいかも、ということを書いたのでそちらもご紹介。

まずはnoteでもウェビナーでもお世話になりっぱなしの藤田さんが所属されているアユダンテさん。YouTubeチャンネルにもGA4の情報が多くおすすめです。

もう1社ご紹介しておきたいのはイーエージェンシーさん。MGRe導入いただいているところで、アプリも含めた統合的な分析のコンサル・サポートを実際にやっていただいている実績があります。


GA4に限った話ではないですが、分析は最初の設計でつまづくと結構取り返しがつかないので、自信がなければためらうことなく相談するのは大事だと思います。

統合的な分析なら専門のコンサルへ。アプリのことならメグリへ。ご相談お待ちしております。