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ユーザー勉強会レポート|オムニチャネル戦略徹底討論!~リテール業界をOMOしろくする?<パート3:リテールメディア編>



2023年6月9日 (金)に、Fireworkとの共催オフラインイベントを開催しました!
MGReユーザーの皆さまをお招きし、「オムニチャネル戦略徹底討論」を実施。Y・T様(以下、Tさん)とM・T様(以下、Mさん)の2名をゲストに迎え、リテール業界をOMOの視点から語りつくしました。

今回は、パネルディスカッションの第3部、リテールメディア編の模様をレポートとしてお届けします!

話し手


大手物販チェーン
Y・T 氏
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大手リユースショップチェーン
M・T 氏
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メグリ株式会社
プランナー 篠田 健吾


セッションテーマ:今注目のリテールメディア、すでに何か検討していますか?


トークテーマ①:リテールメディアとして取り組んでいること

篠田:「リテールメディア」というキーワードが、この半年で非常にバズワードとして流行ってきている言葉かなと思っています。
何かリテールメディアに関して、検討されていることはありますか?

Yさん:うちの場合は、リテールメディアをやらざるを得ない状況になっています。
今年の1月に、米国最大規模の国際小売展示会である「リテールズ・ビッグ・ショー」に参加しました。そこで、リテールメディアのお話がよくされていましたね。米国ではウォルマートが本格的に導入していて、むしろ広告事業を拡大していくのではないか、とまで話題になっていました。

日本でうまくいっているところといえば、九州のトライアルさんですね。まだ非常に成功事例が少ないのが事実なのですが…。
例えば、弊社の競合他社さんのスーパーだと、レジを通過すると会員でない方でも購入品の記録がされるんです。

この記録を基に、例えばA社の歯ブラシを買っている人に対して、1ヶ月後にB社の歯ブラシ広告を出すんです。これを、代理店がお金を出してやっているんですよね。

リテールメディアはメーカーさんがとても注目していて、特に消費財と言われるものに対してお金を出すような状況になってきています。
弊社も、詳しくは言えないのですが、一部サイネージを使って新しい施策に取り組み始めています。

Mさん:私たちも、リテールメディアをずっと検討してきました。
購買履歴を利用する、というのは簡単にできることですよね。CRM分析をしながら、全てメーカーさん協賛のもとお客様へ個別に通知する内容やクーポンを変えていました。

また、飲料メーカーさんやオーラルケアの会社さんなどにご協力いただいて、レジの上に動画を流すサイネージ用モニターを置いています。商品査定の場合やお客様から依頼のあった商品を出す場合、約40分ほど待つんですよね。そうすると、待ち時間がすごい暇だよね、ということで何か商品訴求ができないかということで、レジの上に動画を流すサイネージ用モニターを導入しました。

かつ、サイネージ用モニターのコストを0円にするため、メーカー協賛で全店に入れたという流れになります。

ただ、リテールメディアを配信する際にしっかりとセグメントされていれば良いのですが、お客様が広告を見るときの動線がすごく面倒くさくなっているものが増えている気がして…。

Yさん:実は個人的に、CRMってどこまで効くんだろうということは非常に疑問に思っています。
例えば、昨日すき焼きを食べたお客様、というのは私たちには分かりません。でも、牛肉としらたきと長ネギと春菊を買っているから、次の日にもう1回何か似ているものを買うかもしれない、と勝手にCRMの情報から判断して進めようとするじゃないですか。
大きなお世話ですよね、そんなの(笑)。

Mさん:そうなんですよ!私も実はCRMに懐疑的で…(笑)。
これで盛り上がっちゃいけないんですけれど、大手小売にいた頃はクレジットカードの分析結果が1番効果がありました
他社で商品Aを買っているお客様に対して、今でもその商品Aを売っていますよ、というやり方が1番効きました。

ただ、購買履歴に基づいて何かお客様にアプローチをする、というのはほとんどやっていないんです。メーカーさんが協賛したときだけ実施するという方法なので、基本的に自社のお金は使いません。
実際に効果があるのかといわれると、どうなんでしょうかね…。

Yさん:弊社のホームセンター事業の場合、リフォームをするお客様が多いんですよね。実は、一番家の中で最初に駄目になる場所がトイレなのですが、トイレのリフォーム後に次は洗面所。洗面所が終わったら台所。台所の次はリビング…というように、ホップ、ステップ、ジャンプの感覚で進んでいくんですよ。

このような購買を促進する際、別にシステムを使わなくても、アナログで十分できるんですよ。
ただ、ちょっと問題なのが即時性という点です。例えば、トイレリフォームが終わって、既にキッチンのリフォーム注文をいただいているお客様にキッチンリフォームの案内を出しても意味がないですよね。

しかるべきタイミングで最適な情報を提供するという意味での即時性は、システムを入れないとなかなか難しい部分があるとは思います。
ただ、会社によってある程度カスタマージャーニーが想像できていると、そこまでリテールメディアに肩入れしなくても、とは感じていて…。なかなか難しいお話ですよね。

Mさん:そうですよね。本当に難しいと思います。
大手小売時代に、実験的に運営している店舗がいくつかありました。そこは、入口にあるカメラでお客様の顔分析、認証をしていました。その情報を活かして、次の来店に向けてクーポンを配布し、今までメーカーAの商品を購入されていたお客様にメーカーBの商品を購入していただく、という施策をメーカーさん協賛で実施していたのです。

ただ、リテールメディアは投資コストが安くなく費用対効果が見合わないので、まだまだ浸透は先のことになるのかなと感じています。
チャレンジはするけども全店で頑張れるかというと、今はそこまでじゃないかな、というのが私の感想です。

篠田:顧客は常にスマホを持ち歩いているため、アプリには継続的に触れられるオウンドメディアとしての面があるのかなと。
Cookie(※8)が規制されてターゲットを絞った広告配信が難しくなっている中で、どこか新しい出稿媒体がないかというところで、アプリ内でのリテールメディアがあがっている気がしています

ただ、単にアプリ内に広告を出すだけのことを「リテールメディア」と読んでいる節があるのかなと感じていて、それが少し違和感ですね。

※8 Cookie:Webサイトを閲覧した際に、スマホやPC内のブラウザに保存される情報のこと。ユーザーの意図しない場所でも行動を追跡する「サードパーティーCookie」の規制が進んでいる。

Mさん:GoogleをはじめとしたSEOの仕組みも、たびたびアップデートされていくじゃないですか。なので、どこのメディアを使っていくのかというのはすごく難しいところですが、サイネージがひとつの選択肢かなと考えています。
お客様にとってもデメリットがないですし、会社としても期待以上ですごく良かったビジネスかなと思います。


トークテーマ②:アプリでの広告配信は危険…?

篠田:ある程度ユーザーの特定や特性が分かっているアプリといったスマホのメディアに対して、広告を広げていきたいのかなと思っていて。
広告業界が次の場所を探しているだけではないか?と感じています。もしそれに乗っかってしまうと、アプリは結構危険かと思います。

というのも、ブランド自体が好きな方がアプリを使ったときに、余計な広告が入ってきてしまうことで顧客体験をすごく損なうのではないかと懸念しています。

例えば、とある有名なレシピ動画アプリなのですが、起動すると最初に5秒くらい広告が出るんですよ。個人的にはまずいんじゃないかなと思っていて…(笑)。レシピを今すぐ見たいのに最初に広告を見せられると、やはり顧客体験を損ないますよね。下手すると離脱する可能性もあるかなと。

Mさん:確かに広告のせいで、レシピを見る前にフライパンの中身が焦げてしまった…という事態になりかねませんね(笑)。次に入れる調味料もなんだっけ…?となってしまいそう(笑)。

篠田:本当そうなんですよ!(笑)。このように顧客体験を阻害するようなメディアになってしまうと、非常にまずいのではないかなと思います。

Mさん:きちんと考えた上で広告を配信する分にはいいですが、単にお金が儲けられるとか目新しいものだから、という理由で実行してしまうのは少し違いますよね。

篠田:そうですね。アプリはどうしてもお金かかるので、プロジェクトを進めていく中でアプリでも収益が上げられるよ、というのは確かにプラスです。

ただ、顧客とつながり続けていくことを阻害するものになってしまうのは、よくないなと。そうならないよう、お客様の体験を損なわない設計がどのくらい出来るかが、アプリのオウンドメディアの鍵なのかなと思います。

Yさん:たしかに、リテールメディアを何かしら検討はしています。ただ、PoC(※9)のレベルからは全く抜けていないです、という結論になります。
なので、大々的に何かやっているかと言われるとやっていないんですよね。

※9 PoC:概念実証(Proof of Concept)の略。試作開発に入る前段階の検証プロセスを指し、新たなアイデアやコンセプトの実現可能性、得られる効果などを検証すること。

Yさん:先ほど冒頭に申し上げた通り、小売は3つのことしかできないんです。
一つ目、今来てる方たちに対して商品を買ってもらう。
二つ目、かつて来ていたけど来なかった方に対して商品を買ってもらう。
三つ目、新規の方たちに買ってもらう。

三つ目は、やはりリテールメディアを使っても難しいんですよね。行きつけのスーパーやホームセンターは、家の近くと大体決まっています。
そういう意味で、新規のお客様ってなかなか取れないんですよね。

篠田:そういう意味では、アプリで新規顧客を取りたい、という相談は絶望的にアプリ施策としてむいていないですね(笑)。
基本的にアプリは、店舗といったお客様と接点があるところで使っていただくというものです。

Yさん:来店している人に対して、初めてアプリをすすめるのであって、店舗に来たこともない方にアプリはすすめられないですよね。

篠田:裏を返せば、アプリというのはリピーター向けのチャネルですよね。

Yさん:そうです。どちらかというと「私のこと忘れないでね、離れていかないでね」を実現するための一歩です。そう思うと、忘れないでね、ってちょっと寂しいお話ですね(笑)。

篠田:アプリはリピーター向けという特性があり、さらにプッシュ通知が可能なので能動的に施策を打つことができます。しかも、リアルタイム性の高いレスポンスをもらえるんですよね。
なので、お客様との関係性を維持するためにアプリを使っていただきたいな、とアプリ制作の会社としては思います。


トークテーマ③:今後の展望、取り組みを検討したいOMO施策は?

篠田:はい、最後のテーマですね。今後の展望や取り組みを検討したいOMO施策について伺えますか?

Yさん
:いやぁ…最近は、本当に迷っています。
集客にとても頭を悩ませているので、やれることはすべて検討しています(笑)。本当に、梅雨なのもあり天気のせいというのはあるのですが、言っていられないような状況です…。

そういう意味で言うと、スーパー業界はコロナ禍での巣ごもり需要もあり2020年から2022年の業績が良かったわけです。加えて、業績は前年対比何%という指標を用いるので、今年は本当に大変です(笑)。

かつ、この30年間で見るとほとんど小売業界のシェアって変わっていないんですよ。むしろ、減少傾向になるのでは?というところなのに、前年度予算だったり前年売上をクリアする、というような対前年のお話ばかりになってしまっているんですよね…。

ただ、やはり競合には勝たないといけないんです。そのためには、できる施策は何でもやります、というところですね。
具体的なお話がなくて恐縮なのですが、私たちも成功しているところを真似したい、と思っています。

篠田:ありがとうございます。アプリで見ると、OMOという言葉の中でどうしてもオンラインがすごく最新でいいものだ、という思い込みが見られます。我々も圧倒的にオンラインのチャネルを作っているので、気持ちは何となく分かるんです。

ただ、なんだかんだでチラシをやめられないという点からも、オフラインでも良い施策はあるのかなと思っていますが、いかがですか?

Yさん:チラシについて言うと、効果があるかどうかは正直もう誰も分かっていないんです。でも、皆やめないんですよね。
スーパーだと、実はメニューを決めて来店される方というのは、約4割しかいません。コロナ禍では、みんな店舗に長時間並びたくないから、チラシを事前に見て買うものを決めていました。しかし、今はどんどんコロナ禍の前に戻っていて、チラシを見ないで来店しその場でメニューを決めて買物をするんです。

だけどチラシをやめられない。やめましょうって言うと、「全然分かってないな」と怒られるんです(笑)。

店舗は店舗で、デジタルのチラシがありますよと言っても、やっぱり紙で見せたいんですよね。これは本当にジレンマだと思います。

篠田:アプリにも、なんだかんだでチラシ機能ってなくならないんですよね。

Yさん:メグリさんからしたら、チラシの部分をアプリで運用したらいいのでは?というお話をすると思うんですけど、確かに正解です。
ただ、全部がデジタル化していくかというと、そうはならないんですね。

例えば、電車に乗ったときのつり革にある広告ですが、今は電車内にテレビがついているため要らないはずです。なのに、今でもなくなっていません。あれとチラシは同じ感じです。

篠田:新しいことをやっていきたい中でも、なかなか昔から続けていることを辞められないというジレンマはありますよね。

Mさん:アプリとかWebって、わざわざ開かないと情報が見られないんですが、チラシが目の前にあると目に入ってしまうんですよね。
もちろん費用対効果を考えると、チラシは辞めた方がいいのかな…と思いつつ、まだデジタルとの両立でもいいのかな、と。

篠田デジタルサイネージも、お店に来ただけで目に入りやすく、お客様に見ていただけるというのは大きいですよね。ファミリーマートさんがレジ上に出しているサイネージ広告も、なんとなく見てしまいます。

最後に、今後やっていきたいOMO施策などありますか?

Mさん:私たちの事業は、EC化率が約20%ということでリアル店舗主義なんです。
リユースの商品をその場で買い取って安く売る、というのが私たちの使命です。なので、なかなかeコマースに向かない商品がほとんど。

そんな中、我々が今後どうしていきたいかというと、お客様がリアル店舗で工夫を感じられる店舗づくりと、そこに向けてどうやってデジタルをうまく活用していくか、というところですね。

以前在籍していた大手小売も一緒ですが、やはりみんな待ち時間が嫌なんですよね。買取査定って、土日祝日だと約60分から6時間待ちな訳です。6時間も店舗の中で待っていられますか、というお話ですよね。
これを解決するために取り組んでいることのひとつが、ロッカーの設置です。ロッカーに預けてくれたら、勝手に商品の査定買取をしますよ、というサービスです。

もうひとつが、予約システムですね。実は、ベンダーさんなどにすでに相談しているのですが、どうやって予約システムをデジタル化していけるのかを考えています。

飲食店でも普通に取り入れられている予約システムですが、まだまだ私たちにとってはゴールも見えていない状況です。これを、どう取り入れていくかが大きなチャレンジのひとつかと思います。
それに伴い、アプリも会員基盤もリニューアルします。古物商ならではの問題もいくつかあるので、そういった法律的な部分もデジタルで対応していきたいです。

最終的には、リユースを文化にしていきたいと思っています。
スーパーやホームセンターなどは、文化として生活に根差していますよね。一方で、リユースってまだまだ文化じゃないと思っています。これが普通の文化になるように何ができるのか、デジタルを活用してどうお客様と関わっていくのか、が大きな課題ですね。

伸びている業界を伸ばし続ける、ということにチャレンジし続けていかなければと感じています。
お客様が買った商品をどう私たちに売ってもらって、また店舗で新しい商品を買ってもらう、もしくはリユースの商品を買ってもらうか。この「1次流通繋ぎ」というのが、我々の一番の課題です。

篠田:意外とこのような繋ぎ的な役割を、リテールメディアは担っているのかもしれませんね。

本日は、貴重なお話を伺えて勉強になりました。
Yさん、Mさん、ありがとうございました。

Yさん:はい、ありがとうございました。

Mさん:こちらこそ、ありがとうございました!

さいごに

今回のテーマは【SNS運用編】ということで、リテール業界の最新SNS活用事例を紹介しました!
ぜひ、第1部と第3部もあわせてご覧くださいね😊

▽▼▽第1部:OMO施策編▽▼▽

▽▼▽第2部:SNS運用編▽▼▽

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・アプリを活用したマーケティング手段
・小売企業がアプリで顧客とつながるための方法
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