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店舗在庫とかEC連携とかOMOとかの話


メグリでプランニングを担当している篠キチです。

最近の店舗アプリで人気のある機能の1つに、店舗の在庫確認機能があります。
有名なのはUNIQLOアプリかなと思いますが、うちが開発をお手伝いさせていただいたアプリの事例でも人気があってよく使われています。
実際とあるアプリのEC機能にある「カートに入れる」ボタンと、その横に設置された「店舗の在庫状況確認」ボタンのタップ数を比較してみたところ、在庫確認の方が5倍タップされていた例があり、想像以上に差があることに驚いた覚えがあります。

自分の行動を振り返ってみても、ECで買おうと思ったもののやっぱり一度実物を見てみたいとかサイズ感を合わせてみたいと思うことはありますし、そういうとき近くの店舗に在庫があることを確認できると無駄足にならずに済むので便利です


また、店内にいるときでも在庫確認は意外と重宝します。店舗のスタッフの方が見当たらないときはもちろんですが、スタッフの方を呼ぶのが恥ずかしいとか、聞くと買わないといけなくなる気がして躊躇するとか、けっこう多いんじゃないかと思います。

特に靴などは在庫が表に出てないことも多いので、自分のサイズが店にあるかどうかアプリで調べられると便利です。

実例として、ABCマートのアプリ店内モードには店舗の在庫確認機能が備わっています。

ABCマートアプリの店舗在庫確認機能
店舗にある各サイズの在庫状況がすぐにわかる
©ABC-MART, Inc.


作るのはかなり大変

まあ、いつも通りな感じですが、これをアプリで実現するのはかなり大変です。というかアプリだけが頑張っても基本的にムリです。


ひとくちに在庫と言ってもいろいろあって、大元の倉庫にある在庫、ECサイトで販売するために分けられている在庫、そして各店舗にある在庫。厳密に管理すると運送などの理由で移動中の商品も別の在庫になります。
これらはビジネス上、管理されてないと話にならない情報なので、どこかにデータとして存在しています。

ただ、アプリに店舗の在庫確認機能をつけようと思ったら、各店舗の在庫データをインターネット経由で取り出せないと作りようがありません
しかし店舗の在庫状況はExcelだったり紙の帳簿でしかわからず、ネット経由で確認できる在庫はECだけ、というのは今でもよくある話です。一昔前のオンライン(EC)とオフライン(店舗)が完全に分断された世界では、むしろ当たり前だったと思います。

さらにこの店舗在庫データ、仮にネット経由で情報が取れたとしても更新は1日1回だけという話もよく出てきます。
棚卸し(在庫数をチェックする作業)や商品発注作業の頻度を考えると、店舗業務としては1日1回の更新で十分ですし、常に更新しようと思うと在庫情報とPOSを連携させないと、店頭から売れた分が反映できません。
必要が無ければここまでの作り込みをしようという発想にはなかなかならないでしょう。開発コストも保守コストもばかになりません。
1日1回ならその日の売上に基づいて深夜のバッチ処理等で更新かければ済みます。

しかし、1日1回程度の更新だと仮に在庫確認機能を作ったとしても、夕方頃には実際の店頭在庫と情報に食い違いが発生している可能性が高くなってしまいます。

UNIQLOの場合はかなり高頻度に在庫数を更新しているようですが、僕の経験ではUNIQLOのような事例は極めて希で、3時間に1回程度の更新があればかなりよいほうだと思います。そのため、アプリに表示する在庫情報と実際の店舗在庫の食い違いはそれなりに起こると割り切っておく必要があります

そのため、たいていの在庫確認機能は「△:在庫わずか」のような曖昧な表記にして、仮に来店時に在庫がなくなっていたとしても仕方ないと思っていただけるような表現の工夫をしていることがほとんどです


UNIQLOアプリでの在庫の表示基準
ここまで明確に基準を示しているのは希
© UNIQLO Co., Ltd.


店頭でスムーズにECに遷移させる手段があるか

この店舗在庫確認機能ですが、最初に例として挙げたECサイト閲覧中に店舗在庫が知りたくなったパターンも考えると、ECサイトの商品詳細ページ上に在庫確認の導線を用意して、店舗で確認したくなったときもそこに誘導するのが効率的に思えます。

でも、事前に確認しておかないといけないのが、店舗の値札によく載っているJANコードなどの情報で、ECサイト上の商品詳細ページに行き着かせることが可能かどうか、という点です。


これは意外と大変で、まずECサイト上での品番や商品コード的なものが店舗のJANコード等と全く紐づかない、独自の付番をしているケースはよく見かけます。
これが内部的に紐付け管理されていればまだ手はありますが、いずれにしてもバーコード等から得られる情報だけでECサイトの商品詳細ページに直接飛ばせるような仕組みがないと、店頭で在庫確認機能にお客さんがたどり着く手段を用意できません

これができなければ、アプリ用にWebAPIを用意してもらって独自に機能を作り込むか、対応する商品詳細ページに直接遷移できるQRコードを値札につけるなどの対応になり、実現のハードルは高くなります。

弊社のMGReとも連携しているECサイト構築プラットフォームのfutureshopさんには、在庫管理システムと連携してECサイト上に店舗在庫を表示可能にする機能が用意されています。
こういったものを活用すれば比較的容易に実現できそうです。


店舗在庫がなかったときどうするか

在庫確認機能はお客様には便利ですが、単に在庫の状況をそのまま表示するだけだと、せっかく来店いただいてもスタッフが介在することなくお客様が帰られてしまうケースを生んでしまうので、店舗の立場で考えると必ずしもよいサービスとは言えないという側面を持っています。

また在庫確認機能がECサイト上に用意されている場合だと、ECにアクセスしたついでにそのままECで買われてしまうパターンもでてきます。

店頭で接客をした結果、ECの売上が立つだけで店舗やスタッフの実績にならないという事態が起きると、そもそも店舗向けの機能だったはずなのに店舗スタッフにはまったくメリットが感じられないという困った話になってしまいます。
こういう課題は放置せずにきちんと解消していかなければ、いわゆるOMOとかオムニチャネルといった、お客さんにとってよりよい顧客体験を提供するという話も夢物語として終わってしまいます

最初に例に挙げたABCマートの場合、在庫確認機能の表示をよく見ると在庫がない場合のお取り寄せ・自宅配送をご案内していて、店舗スタッフに接客誘導するような形を取っています。在庫確認機能が店舗の実績を損なわないよう、配慮されていることが感じられます。

ABCマートアプリは店頭在庫がないときの表記を×とせず△にして
店舗スタッフに接客誘導されるように配慮されている
(赤線部を参照)
©ABC-MART, Inc.


弊社のクライアントでもあるバロックジャパンリミテッドさんは、店舗に在庫がなかったときに、ECの在庫があればその商品を店舗で販売できる『スマートオーダー』というシステムを導入されています。

スマートオーダーのスタッフ用接客画面
(ecbeing様プレスリリース資料より引用)
バーコード読み取り画面。
この情報からECサイトの在庫状況を確認し、店舗支払いで販売ができる
(ecbeing様プレスリリース資料より引用)

スマートオーダーは店舗に在庫がなくても、ECの在庫を使って店舗が売上を立てられる仕組みになっていて、店舗スタッフには明確にメリットがあります。

これを使って、もし店舗に在庫がなかったとしても次の手をお客さんにご案内できれば、在庫確認は店舗にとっても十分なメリットを感じられる機能になってきます。
もちろんお客さんにとっても来店が無駄足にならないとわかった状態で来れるので安心感が違いますし、ひいてはブランドへの信頼感にもつながる話ではないかと個人的には思います。

これはまさにOMO(Online Merges with Offline)といえる仕組みで、オンライン・オフラインの在庫情報を組み合わせて活用し、顧客体験向上につなげた好事例ではないかと思います。



アプリプラットフォーム『MGRe』には標準でバーコードリーダーが搭載されていて、例に挙げたように店頭のバーコードからECサイトのページに遷移できる仕組みがあれば、カンタンに店舗で商品情報を閲覧できる仕組みが提供できます。
小売向けの優れた機能が充実したMGRe。実績も豊富ですので、ご興味ありましたらぜひお気軽にお問い合わせください。


タイトル画像はぱくたそさんの「クローゼットの洋服のフリー素材」を使わせていただきました

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