オンラインとオフラインを融合するOMO論、そしてその先へ|セミナーレポート
「OMOを推進することになったが、どういったことを実践すればよいのか悩んでいる」「オフラインでのデータ取得ができていないので、OMOを実現できていない」こんなお悩みや課題をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
オンライン(EC、Web、アプリ)だけでなく、オフライン(店舗)でのお客様の行動を把握する、即ち来店データや店舗内行動データを取得し、連携することでOMOを実現する手法を解説します。
そしてOMOのその先へ。お客様にとっての“心地よいお買い物体験”をさりげなく実現するためのユニファイドコマース、アパレル業界を例に体験価値の創出について語ります。
話し手
TIS株式会社 DXペイメントコンサルティング部 古井戸 一郎氏
2021年7月TIS株式会社に入社。前職の大手スポーツメーカーではEC事業構造の変革を推進。ECに関わる倉庫・物流業務、オペレーション、システム基盤、および組織体制のあり方の刷新などに取り組む。また、前々職の黒物家電メーカーの情報システム子会社所属の時代には、Owned Mediaの構築・運営、スマホアプリを活用したプロモーション施策、WebサイトのUX/UI改善などに従事。
株式会社バニッシュ・スタンダード Sales Manager 野澤 博史氏
海外のBPO企業での業務経験を経て、2013年にSaaSツール提供会社に入社。 ファッション業界を中心に基幹・POS・CRMシステムのトータルソリューションを 提案。2020年、バニッシュ・スタンダードに入社。1人目の営業メンバーとして、 小売業界を担当。ビジネス規模に応じたSTAFF STARTの活用方法、 売上最大化、スタッフのポテンシャル最大限発揮できる提案を行ない、 スタートアップ企業から上場企業まで幅広い企業のDX化を支援。
メグリ株式会社 プランナー 篠田 健吾氏
IT系企業で新規事業の立ち上げに携わり、2014年、株式会社ランチェスターに入社。入社当初はWebサイト・アプリの分析および企画を中心に、サービスの新規営業にも従事。2020年よりプロダクト開発チームでプランニング担当として「MGRe」の新機能の企画や改善等の業務を担当。
Tangerine株式会社 COO 成田 雅弘氏
アパレル業界にて大手含む複数社で店長やSV、MD計画(仕入れ・VMD立案・販促)、マーケティングなどに従事。その後大手POSシステム会社にてリテールサービスの新規事業企画などを担当。2020年にTangerine株式会社に入社。現在は執行役員としてStore360事業部全体を統括。
本日の内容
古井戸さん:本日は「オンラインとオフラインを融合するOMO論、そしてその先へ」と
題しまして、お客様に心地よいお買い物体験を提供するためのユニファイドコマースの考え方について、各社が提供するサービスで具体的にどのようなことができるのかについてお話ししたいと思います。
キーワードとして取り上げているOMOとは「Online Merges with Offline」の頭文字を取った略称です。オンラインとオフラインが融合していくという考え方に基づいています。アフターコロナの現在は、多くの企業で中期経営計画にOMOというキーワードが取り上げられています。
直訳すると「オンラインとオフラインの融合」という意味になりますが、皆さんの会社にとってどのような考え方でOMOを実現していくべきなのか、どのようにすればその取り組みがうまくいくのかについてお悩みの方も多いのではないかと思います。
その解決の一助として、ある課題についての検討事項をお話ししたいと思います。この話が参考になれば幸いです。
オンラインでは、ECサイトやウェブサイト、アプリを通してデータの取得が容易になりました。しかし、オフライン(店頭)でのデータ取得が難しく、オンラインとオフラインを結びつけることに課題を感じている方も多いと思います。そういった点について、具体例を紹介しながら話を進めていきたいと思います。
最後にキーワードとして、ユニファイドコマースについて触れておきます。ユニファイドコマースは、直訳すると「統一された商取引」という意味ですが、重要なのは、お客様にとっての買い物体験や事業者にとっての販売体験をどのように統一し、統合するかです。これによってより良い買い物体験を提供する方法について考えていきます。
最初に、「ユニファイドコマース世界観の一例」と題して、アニメーションを制作しました。この約4分間のアニメーションは、前半が不便な体験を、後半が心地よい体験を描いています。視聴する際は、その対比に注目していただければと思います。それでは、アニメーションをご覧ください。
皆さんの会社でも、不便な体験を解決したいと考えている部分があるのではないでしょうか。ここからは、それぞれの体験や各社のサービスを紹介しながら進めていきます。質問があれば、途中でもZOOMのQ&Aに投稿してください。全ての説明が終わった後のQ&Aセッションでは、質問に範囲内で回答します。
カスタマージャーニーマップの説明
古井戸さん:こちらのカスタマージャーニーマップの説明に移ります。このジャーニーマップは、先ほど紹介したアニメの後半部分における良い体験をもとに作成されています。この画像のそれぞれのパートに基づいて解説します。
古井戸さん:まずはスタッフの投稿内容がSNSにも連携されている点から始めます。女性が自宅で気軽にSNSをチェックし、情報に触れることからスタートしています。この部分は、バニッシュ・スタンダード様の『STAFF START』で提供されている機能の一部です。これについて、野沢さんから詳しい解説をお願いします。
野沢さん:弊社の『STAFF START』というサービスでは、スタッフが発信するコンテンツをブランドサイトに簡単に投稿できるようになっています。さらに、そのスタッフが関連付けている各種SNSにも同時にコンテンツを投稿できるSNS連携機能を基本機能として持っています。このおかげで、SNS上でもスタッフの魅力を発信し、それがオンラインサイトでの売り上げや店舗への来客につながるという実績が可視化できるサービスを提供しています。
『STAFF START』は特にアパレル業界で広く導入されています。SNS連携機能はスタッフスタートが始まった7年前からあります。この機能の目的は、店舗スタッフの接客力をオンラインでも発揮できるようにすることでした。
これにより、自社サイトだけでなく、全世界が見るSNSでもブランドの魅力を発信することが可能になりました。その結果、ある会社ではスタッフのフォロワー数が1000万人近くになり、大規模なリーチを無料で実現できるようになったという実績もあります。
さらに、外資系企業との話の中で、店長になるためには数万人以上のフォロワーが必要な場合があることが分かりました。これからは個人の発信力やファンを作ることがキャリアアップにも重要になってくると感じています。情報発信の重要性が高まる現代において、私たちのサービスがどのように役立てられるか、さらに検討を進めていきたいと考えています。
古井戸さん:自社のECサイトやブランドウェブサイトにスタッフの投稿を掲載する企業が多いと思います。しかし、自社のサイト、いわゆるオウンドメディアに毎日訪れるお客様は少ないかもしれません。SNSに投稿することで、何気なく毎日見てもらえる機会を提供し、そこからの流入が増えていると思いますが、どうでしょうか?
野沢さん:確かに、自分のブランドサイトを毎日見ることは少ないですよね。例えば、電車での通勤や通学中にSNSを何気なく見る時間はあります。そこでスタッフが投稿したコンテンツや日常の風景に共感し、サイトを訪れてもらえる機会が増えることで、新規ファンを獲得できるかもしれません。
古井戸さん:次に、SNSで見つけた情報を店舗訪問につなげる施策について話を進めたいと思います。アニメーションでは、何気なく見ていたSNSから商品予約や来店予約を行うシーンが描かれています。この予約を通じて、お客様は商品に触れ、店舗側はどのお客様がいつ来店するのかを把握できるようになります。これをどのように実現していくべきかについてお話しいただければと思います。
野沢さん:先ほどの通り、スタッフが積極的に情報を発信することでファンが増えています。これを私たちは『スタッフのインフルエンサー化』と呼んでいます。彼らが全国を出張し、その様子をSNSに投稿することで、例えば京都や埼玉で大行列ができるほどの影響力を持っています。具体的には、スタッフに接客してもらうために90分待つような現象も起きています。これは実際に起こっていることです。そういった活動が店舗の売上にも繋がっています。
古井戸さん:なるほど、ありがとうございます。本社で開催されたスタッフアワードを拝見しましたが、スタッフがロールプレイング中に自分の投稿したコンテンツをスマホで表示し、お客様に商品の試着感などを説明するシーンもありました。そういったことにも使われているということですね?
野沢さん:はい、その通りです。スタッフは自分の投稿内容を活用して、お客様に商品を紹介しています。例えば、自分と身長が近いお客様には、同じ身長のスタッフが投稿したコンテンツを見せるなど、様々な方法で使用されています。
古井戸さん:面白いアプローチですね。スタッフがまるでインフルエンサーのような影響力を持つということですね。
次に篠田さん、アプリを通じてどのような体験を提供できるのか、そしてそれには何が必要かについて少し解説していただけますか?
篠田:小売向けのアプリを考えると、きっかけはポイントカードなど、来店の動機が最も重要です。しかし、それだけではもったいないと感じています。
買い物をする前にブランドの良さや価値を日頃から認識してもらい、『STAFF START』のようなサービスに日常的に触れてもらうことが大切です。SNSをきっかけにして情報を得たお客様に、アプリを使って常に接点を持ち、スタッフの情報を登録しておくことで、より深い関係を築き、結果として来店や予約につながることが期待できます。
システム的には、アプリを利用するお客様は私たちを既に知っていると思っていますので、ログインを促すことで予約をスムーズに進められるよう心がけています。アプリ開発にはこのような点を考慮して取り組んでいきたいと思います。
さらに、SNSからECサイトへの導入だけでなく、アプリを介してお店に来ていただき、そこから来店予約につなげることができるという点も重要です。
古井戸さん:ありがとうございます。この資料には「SSO(シングルサインオン)」というテクニカルなキーワードがありますが、これについて具体的に説明していただけますか?
篠田:ECサイトに限らず、私たちのスタッフのサービスを含めて、多くのサービスがアカウントを通じて混在していると思います。例えば、アプリを使っている場合、一度の認証ログインで、どのサービスにも同じアカウントで接続できるようになります。
これにより、サービス間をシームレスに繋げられるのが、シングルサインオンの意味です。つまり、アプリを操作している間は、すべてのサービスにログイン状態を維持できるわけです。これは難しいことかもしれませんが、簡単に言えばそのような状況を作り出すことです。
残念な体験として、例えばメールマガジンが届いたり、プッシュ通知が来たりした時に、アプリを開いても再びIDとパスワードの入力を求められると、お客様は諦めてしまう可能性があります。
しかし、シングルサインオンがあれば、このような状況をシームレスかつ快適にすることができます。
古井戸さん:お客様が情報に触れて実際に店舗を訪れるきっかけについてです。来店して予約するプロセスに移ります。
実際に店に来た時の体験について説明しましょう。例えば、アニメの中でのシナリオでは、お客様が店に来ると、店員が近づいて「試着を予約した田中です」と言い、スマホでQRコードを提示します。これを読み取ることで、「田中さん、いらっしゃいませ」と迎えられます。技術的には、このプロセスを実現するためのさまざまな方法が考えられます。
こちらは、MGReさんのアプリとTangerineさんの店舗でのビーコン技術の組み合わせに関する話です。MGReささん、アプリで素晴らしい体験を作るために重要な要素について解説をお願いできますか?
篠田:はい、多くのサービスを組み込むためのSDK(ソフトウェア開発キット)のようなものがあります。これをアプリにスムーズに組み込むことは非常に重要です。
そうすることで、アプリ内でさまざまなサービスを組み合わせ、顧客体験を向上させることが可能になります。
カスタマイズは、手作りでも可能ですが、プラットフォームの制約の中でも柔軟性を担保することも大切です。OMOやユニファイドコマースのようなサービスを開発する上で、この柔軟性は非常に重要で、我々はこれを重視して開発を進めています。
古井戸さん:ありがとうございます。『外部サービスとの連携及び拡張性』もキーワードとして挙げられました。スマートフォンは最も身近なタッチポイントであり、様々なサービスや店舗との連携を通じて顧客体験を豊かにすることが求められています。一つのサービスシステムだけではなく、さまざまな会社や店舗が持つシステムとの柔軟な連携が重要となっているということですね。
Tangerineさんの「Store360」というサービスについて、店舗側での仕組みについて、解説をお願いします。
成田さん:弊社の「Store360」は様々な機能を持ち合わせておりますが、特に来店データが中心的な役割を果たしています。来店データをどのように取得し、その意義についても深掘りしています。
一般的に、来店データは購買された顧客の行動を追跡し分析するために使用されます。しかし、専門店など購買率の低い業種では、来店したものの購入しなかった顧客を把握するのが難しいことがあります。
一方、ECサイトやオンラインでの活動では、訪問データからコンバージョンに至るまで全てトラッキングが可能で、リターゲティングが容易に行えます。
このオンラインのアプローチを店舗に適用しようとすると、来店だけのデータが非常に重要になります。これをどのように捉えるかが、私たちのサービスでカバーする部分です。
具体的な方法としては、来店した顧客を特定するために会員IDを紐付ける必要があると考えています。
この会員IDの事前検知についてですが、カメラやピープルカウンターを使用することで来店データに似た情報は収集できます。ただし、具体的にどのお客様かを特定するのは難しいです。
店舗内で会員データを特定するには、アプリが重要なキーワードになります。弊社の言う来店データとは、アプリを利用した来店データの収集を定義しており、ビーコンなどの電波を利用して来店をフリクションレスに検知する技術をSDKという簡単なモジュールキットで提供し、既存のアプリに組み込むことができます。
古井戸さん:ありがとうございました。オンライン、特にECサイトでは、どのユーザーがアクセスしているかを簡単に把握できます。購入していただかなくてもログインさえしていれば、誰が来店したかを追跡でき、後のメッセージングにもつながります。また、カートに商品を追加した顧客に対して、購入忘れを促すメールなどのコミュニケーションもすでに実現可能です。
店舗では来店者の情報を取得することが難しいという問題が続いていましたが、技術を活用することで解決できる部分があると思います。
例えば、事前に登録しておけば、画像解析や顔認証を用いて、入店時に自動的に認識され、「田中様、いらっしゃいませ」と迎えることも可能です。ただし、対面での接客では、初対面の店員に名前で呼ばれることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
したがって、技術を駆使しつつ、さりげなく自然な接客をどう実現するかが鍵となります。これには、アプリとの組み合わせが重要なポイントとなると思いますが、成田さん、いかがでしょうか?
成田さん:店舗では、会員IDの取得はアプリを通じて行われることになると思います。アプリの会員は年間の購買額(LTB)も高い傾向にあるため、データ収集の観点からもアプリの活用は重要です。ただし、どのようにロイヤルティを提供するかが重要で、これによりアプリの利用を促進することができるでしょう。
古井戸さん:ありがとうございました。篠田さん、多くの企業にアプリサービスを提供している視点から、アプリがオンラインだけでなく店舗での体験向上にどのように役立っているか、事例や利用企業からのフィードバックがあれば教えていただけますか?
篠田:アプリを利用することによって、特にデータを取得する面では大きなメリットがあると思います。成田さんが述べたように、アプリが提供できるサービスは、購買のポイントでの起動に焦点を当てがちです。そのため、店舗内で付加価値のあるサービスをどのように提供できるかが重要です。
この点を考慮することで、買わなかった理由の分析や購入までの検討段階のデータを詳細に取得できます。これにより、お客様は商品やサービスについてより深く理解できるようになります。
特に、店舗内でのデータは失われがちなので、その部分のデータを取得できることは大きな意味があります。
古井戸さん:アプリだけでは実現できないこともあり、店舗側の仕組みと組み合わせることが重要ということですね。ありがとうございました。
古井戸さん:店舗に訪れるお客様に対して、より充実した体験を提供する方法を考えるパートに入っていきたいと思います。
アニメパートでは、お客様が事前に予約して店舗を訪れる場合、店員は予約された商品だけでなく、おすすめの商品を準備するというシーンがあったかと思います。
まず、成田さんにお客様が店頭で試着した商品をどのように把握できるかについて解説していただきたいと思います。
成田さん:ありがとうございます。弊社の機能的な側面について少し説明させていただきます。アプリ内には、私たちのSDKを組み込むことで利用可能になる機能があります。その中に、商品をスキャンする機能や、それに付随するオプションとしてIoTデバイスからデータを取得する機能があります。
試着された商品を特定する際には、まずどのお客様がどの店舗に来店したかという来店データが必要です。これは会員IDに紐づいた来店データと関連付けられます。
さらに、どの商品に興味を持ったかというデータについても取得できます。一番シンプルな方法は、来店したお客様がQRコードを用いて商品をスキャンすることです。これにより、どのお客様がどの店で何の商品に興味を持ったかというデータが得られます。
さらに、RFIDのような高度なオプションを導入している企業様も増えています。試着室にRFIDリーダーライターを設置することで、どのお客様がどの店で何の商品を試着したかというデータをフリクションレスに取得できます。
弊社のサービスでは、お客様と商品を紐付けるだけでなく、店舗のロケーションデータを組み込んで、誰がどの店で何に興味を持っているかというデータを一つのプラットフォームで管理しています。
古井戸さん:ありがとうございます。続いて、「NIAiNO」というサービスについて説明させていただきます。
「NIAiNO」は現在、骨格タイプ診断サービスとなっております。
このサービスでは、ユーザーが自分のスマートフォンで撮影した5枚の写真をサーバーにアップロードします。
その後、AIを用いて、ストレート、ナチュラル、ウェーブの3種類の骨格タイプを診断します。
アニメではお客様が店舗の試着室で自身の写真を撮り、その骨格タイプに基づいて、店員が同じ骨格タイプを持つ別のスタッフのコーディネートを紹介するシチュエーションが描かれています。これは、骨格タイプによって似合う服を選ぶというアイデアに基づいています。
ただし、このサービスは現在骨格タイプ診断に限定されていますが、将来的にはカラータイプ診断や顔タイプ診断などにも拡大する計画です。
お客様の行動データや属性情報を活用して、さらに適切な商品の推薦につなげたいと考えています。このサービスの拡張に対して期待していただければ幸いです。
古井戸さん:購入の最終段階では、アニメのシーンにおいて、客が店舗での接客を経ても実際には購入せずに帰るシチュエーションが描かれています。
しかし、お客様が自宅に戻った後、スマートフォンのアプリからプッシュ通知が届き、「来店ありがとうございました」というサンクスメッセージや、店舗で試着した商品の紹介、同じ骨格タイプのスタッフによるコーディネートの提案が行われます。
このようなサービスが可能な理由は、オンラインとオフラインを通じて多くの情報を収集し、それらを組み合わせて顧客に情報を提供しているからです。
アニメの前半では、店舗で購入せずに帰った客が、後でECサイトで服を購入しようとするも、どの商品だったかを思い出せないシーンが描かれています。
実際に店舗で気に入った商品をECサイトで購入しようとした際に、具体的な商品を探せない経験は多くの人が共感できるでしょう。
各メーカーは商品に品番を割り当てていますが、購入時に品番をメモして帰る人は少ないと思います。店舗での試着情報を技術を使って記録し、その情報を商品の色やサイズを含めてアプリのプッシュ通知で顧客に伝えることができれば、顧客はECサイトで容易にその商品を探して購入できるようになります。
一方で、店員の経験も向上しています。アニメでは、客が何も購入せずに帰ると、「もしかして後でECで購入してくれるかもしれない」と店員が考えるシーンがあります。しかし、ECでの購入が店員の成績に反映されないという残念な実情も描かれており、顧客だけでなく店員にとっても改善が求められる体験として描かれていました。
後半部分では、良い体験について触れています。ここでは、ECサイトで商品を購入した顧客に対して、店員さんも喜んでいるシーンが描かれています。その理由は、店舗での接客がしっかり記録されており、店舗での直接の購入ではなく、接客の結果としてECサイトで購入された場合も、その店員の成績となるためです。
この考え方はバニッシュ・スタンダード社で取り入れられているものです。野沢さん、バニッシュ・スタンダードで行われている評価方法について、具体的な事例として、スタッフの評価につながる情報の取得方法や成果報酬制度についてご説明いただけいますでしょうか。
野澤さん:『STAFF START』を通じて、約2600のブランドを持つ企業の約70%がオンラインでの成果を評価しており、売上に応じたインセンティブが平均3%、高い場合は7%支払われています。
さらに、スタッフがSNSで発信することで、SNS経由の売上が増えると、そのインセンティブ率は3%から7%よりも高く設定されることがあります。また、これは個人の評価だけでなく、店舗のスタッフ全員が協力して成果を上げる場合も評価されます。
古井戸さん:なるほど、ありがとうございます。スタッフがコーディネートを提案し、その内容を写真や動画で撮影してお客様に提示し、それを見た結果、購入に至ったというのは、スタッフの成果ですね。
野澤さん:そのとおりです。私たちがこの『STAFF START』を立ち上げた時から、スタッフを評価することに注目しており、スタッフの業績を評価軸として捉えるシステムが整っています。また、分析画面なども基本的にパッケージに含まれています。
古井戸さん:その成果を正確に記録し、追跡できるのは、オンラインだからこそ可能なことだと思います。例えば、オンライン情報を見て店舗に来ていただいたお客様に対して、何らかの評価を行うことが現在可能か、または将来的に行いたいことがあれば、詳しく教えていただけますか?
野澤さん:当社のみでは、オンラインでの実績を把握しており、店舗売上については、POS、CRMシステムと連携を取り、トータルでの評価が可能になっています。
古井戸さん:今回のアニメで紹介したような、全てがシームレスに繋がっている世界観を作るためには、アプリや店舗の仕組みが重要な要素になると思います。アプリならでは担える役割について、篠田さんの方からもう少し詳しく話していただけますか?
篠田:『STAFF START』さんとは連携機能を持っており、この部分に特に重点を置いて作成しました。
『STAFF START』さんから他のサービスや店舗に展開しようとする際、利用しているお客様がどのような方々かを正確にデータで捉えることができるように、私たちは常にお客様を正確に認識し、行動を把握してデータを蓄積しています。
これは外部サービスやECサイト、アプリ内機能に関わらず、シームレスに顧客サポートにつなげるために重要です。
この柔軟な基盤は非常に重要であり、さまざまなサービスと組み合わせることで重要な役割を果たします。
古井戸さん:アプリは常に手元にあり、スマートフォンを通じて情報の発信と取得を行い、店舗訪問時の体験を向上させるために不可欠かと思います。
また、店舗での接客を受けるために来店するお客様もいらっしゃいますが、購入しないこともあり得るため、店舗での行動情報が重要になります。Tangerineさんのシステムやサービスは、ここで大きな役割を果たすと考えています。
特に、店舗に来店されるお客様から情報を得る方法は重要です。この点について成田さん、何かコメントがあればお願いします。
成田さん:今日のテーマは、来店データの重要性についてです。私たちの会社では、来店したけれど購入しなかった人を特定できることが非常に重要だと捉えています。
さらに、店舗に来たけれど購入しなかった人が、来店後にオンラインサイトで商品を購入した場合、この情報は通常、ECサイトのデータにのみ紐づけられます。しかし、来店データとECのデータを紐付けることにより、例えば「Aさんがどこどこ店に来店して1週間後にオンラインで購入した」というようなデータを得ることができます。
これにより、オンラインで購入されている商品や顧客の動向が、来店データを通じて可視化されます。
こうしたデータをもとに、店舗の価値は単に店内での購入に限らず、オンラインへの送客という形でも評価できるようになります。
これにより、店舗の価値は新たな視点で広がっていくと考えられます。つまり、来店データの活用によって定量化できる点が重要です。
古井戸さん:オンラインでは情報を簡単に取得できますが、オフラインでもどのように情報を収集し、それをどのように活用し、どの結果に生かしていくかが重要です。ただし、これを実現するためには、デジタルツールやシステムが必要不可欠であり、それらをどのように組み合わせていくかが重要なポイントになるかなと思います。
過去の変遷を振り返ると、オンラインとオフラインの間の一方的な送客から始まり、オムニチャネル、そしてユニファイドコマースへと発展してきました。この進化は、オフラインとオンラインの連携を重視するOMO(Online Merges with Offline)の文脈において特に重要です。
これは難しいことではなく、お客様にとっても事業者にとっても快適な体験を提供していくこと、そのためには、どの情報を何に生かしていくかをしっかり考え、そのために必要なサービスを適切に選んでいくことが重要だと思います。
Q&A
では、一通りの説明が終わりましたので、一旦ここでQ&Aのセッションに入りたいと思います。1点だけですが、Q&Aに投稿いただいた質問がありますので、読み上げさせていただきます。
質問「特定の商品のRFIDの読み取りはどのようにするのでしょうか?アプリが関係してくるのでしょうか?」
成田さん:2つの要素が必要になります。1つは試着室の中にRFIDリーダーを設置することです。例えば試着室が複数あれば、試着室ごとにRFIDリーダーを設置することがポイントです。この時点で、どの試着室に何の商品が持ち込まれたかがRFIDの仕組みを通してクラウドに上がります。
2つ目は、どのお客様がどの商品を試着しているかをアプリで紐付ける形になります。試着室で持ち込まれた商品をクラウドに上げ、試着室の中にQRコードのようなものを設置しておきます。お客様がそれをスマートフォンで読み取ると、クラウドから現在試着されている部屋の中の商品情報を取得し、顧客IDと商品を紐付ける仕組みを実現しています。
上記の画像の左側に表示されている部分ですね。RFIDの情報を受け取り、店舗側に設置されている端末からQRコードが生成されます。そのQRコードをお客様のスマートフォンで読み取ってもらう流れです。
古井戸さん:ありがとうございました。では、ユニファイドコマースを実現するための最後のパートに移りましょう。
ユニファイドコマースを実現するために
古井戸さん:ユニファイドコマースは様々なサービスやシステムを組み合わせて、あらゆるデータを統合することが可能です。
お客様の情報をオンライン、オフライン問わず収集し、それを組み合わせてパーソナライズされた情報として提供します。
これにより、お客様にとって快適な体験を提供し、事業会社側はどのような貢献が購買に繋がったのかを明確にすることができます。ひいてはスタッフの評価や成績にも反映されるでしょう。
デジタルマーケティングのみに焦点を当てると、デジタルデータの取得と分析が主な話題になりがちですが、重要なのはどのようにデータを取得し、誰のためにそれを活用するか、そしてどのようにシステムやサービスを連携させていくかです。
今回は4社共同でプロジェクトを行い、各社が素晴らしいサービスを提供しています。
それぞれのサービスを個別に導入することで、充実した体験が可能になると考えています。
今回のアニメーションの後半部分で紹介された良い体験は、実際にはまだ完成していないものです。これは、異なるサービスを組み合わせることで得られる体験を示唆しています。
したがって、各社に問い合わせを行い、自社で抱えている問題や目指す体験について話し合うことをお勧めします。
TIISの紹介
古井戸さん:最後に、TISの紹介をさせていただきます。TISはシステムインテグレーターであり、大規模なシステム開発やECの開発、データ利活用の基盤構築などを行っています。多様なサービスからのデータを統合したいが、自社だけでは解決が難しい場合には、ぜひTISにご相談ください。
また、スタッフの活用やアプリの充実、オフラインでの情報収集などの分野で改善を目指す場合も、各社のサービスが有効です。
それでは、時間になりましたので、本日のウェビナーはここで終了します。ご参加いただき、誠にありがとうございました。
まとめ
今回はリテールメディアを導入するメリットや課題、将来性など様々な観点について、ドラッグストア業界を軸に置いたセッションが行われました。リテールメディアの導入や運用について悩んでいましたら、ぜひ当社にお問い合わせください!😊