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ファミペイのクーポン機能で考えるアプリとDX

メグリでプランニングを担当している篠キチです。

仕事柄、iOSとAndroidの端末を2台持ちで常用し、研究用に他社のアプリとかもめっちゃインストールしてあるんですが、そんな中で僕がプライベートでも使い倒してて、めちゃくちゃ良くできてるアプリだなと常々思ってるのがファミリーマートさんのファミペイです。

ちなみに開発してるのは残念ながら弊社ではありません。アイリッジさんです。

ファミペイのスゴいところはたくさんあるんですが、さりげなく作られてるように見えるわりに、技術的にめっちゃ大変なことしてるのがクーポン機能です。今回はそれを検証してみたいと思います。想像で


ファミペイのクーポン機能の概要

クーポンはアプリ起動直後に表示される画面に、メニューとして用意されてます(下のスクショの赤枠部分)。
期限が近いクーポンがあると「今日まで!」とかアラート出ますし、Push通知でも教えてくれます

篠キチのiPhoneでとったスクショ。バーコードとかは一応モザイクで
© FamilyMart Co., Ltd.

「クーポン・回数券を使う」をタップすると、たくさんあるクーポンから使いたいものを選ぶ画面になります。

© FamilyMart Co., Ltd.

ここで各クーポンの横にある「使う」をタップすると、使用するクーポンがアプリにセットされる形になります。基本的に何個でも選べます

© FamilyMart Co., Ltd.

クーポンをセットして「決定する」をタップすると、元の画面に戻ります

どのクーポンを使うことにしたか(セットしたか)はこの画面でもわかるようになっていて、あとはクーポンを使える商品をもってレジに行き、支払いのときにファミペイのバーコードを出せばOKです

© FamilyMart Co., Ltd.

ファミペイはクーポンを1つずつレジの人に見せたり、クーポンのバーコードを読んでもらう必要がなく、ファミペイのバーコードを読み取ってもらうだけで、クーポン対象の商品が値引きになったり無料になったりするので手間がなく非常に便利です。レジでの操作もほぼないので店員さんもかなりラクなはず。

また、クーポンをセットしたけど実際には買わなかったり、レジに行かずにアプリを閉じた場合は、30分経ったらクーポンを使う前の状態に勝手に戻ってくれます


何がスゴいのか

このクーポン機能、使うユーザーにとっても店員さんにとっても手間がなく、使わなかったら勝手に元に戻るのでおそらくトラブルやクレームも少ないと想像してます。非常に理想的な顧客体験を提供してると思います。

ただ、これを実現するのはめちゃくちゃ大変です(あくまで予想ですが)。なぜかというと実はこのクーポン機能、アプリもよくできてますが、むしろアプリ以外のところがスゴい。大変なのはアプリ以外のところです。

実際に使ってみるとわかりますが、クーポンをセットした状態でファミペイのバーコードをレジに読んでもらうと、即座にPOSレジ上の商品の値段にクーポンが適用されて変更されます。無料クーポンならタダになる。

そんなの当たり前じゃん、と思うかも知れません。でも

  • どのクーポンを使うか決めたのはアプリ上。アプリしかしらない

  • POSレジが読み込んだのはファミペイのバーコードだけ。それでPOSレジ側がわかるのは、いま誰が会計しようとしているかだけ。

そうです、冷静に考えるとお客さんがどのクーポンをセットしたか、アプリからPOSレジには何も伝わっていません。

にもかかわらず、POSレジ上で即座に値引きが適用される。いったいどうやって…? 
ちなみにファミペイアプリとPOSレジが内緒で直接通信してる、みたいな事実は少なくとも僕が見た限りありません(当たり前)


想像してみる

ファミペイのクーポンの仕組み(篠キチ想像図)

これは僕が想像するファミペイのクーポンの仕組みです。僕が作ったわけじゃないので想像するしかありません(BGMはイマジン)。

① 選んだクーポンの情報をサーバに送る

まあこれは間違いないと思います。アプリの中にしか情報がなかったら本当にPOSレジに伝える方法がなくなってしまいます。少なくともPOSレジからアクセスできそうなところに情報を送っておかないと何も始まりません。

②POSレジにバーコードを読み込ませる

これも普通です。うちが作るアプリでも基本機能として提供してます。
これをすることで、POSレジに買い物しようとしているユーザーが誰なのかという情報を読み込ませることができます。
いわゆるID-POSと呼ばれるタイプの機械で、これを使うとお客さん1人1人(顧客情報)がどんな商品を買ったか(購買情報) を組み合わせて分析できることができるようになります。
このIDをPOSに読み込ませるためにファミペイのようにアプリに会員バーコードを表示したり、プラスチック製のポイントカードのようなものを用意してバーコードや磁気ストリップを読み込ませたりします

③POSレジがセットされたクーポンの情報を読み取りに行く

スゴいのはここからです。

読み取った会員番号をもとに、このユーザーがアプリ上でどんなクーポンをセットしたか、POSレジがサーバに問い合わせをしています。(あくまで予想)

これがアプリ専用のサーバなのか、POSが問い合わせ可能なシステムにアプリ用のサーバからほぼリアルタイムで同期を取っているのかそのへんはわかりませんが、少なくともアプリからアップロードされたクーポンのセット状況をリアルタイムで確認しに行く仕組みがPOSレジに備わっているはずです

④POSレジ上で値引き・無料の処理を適用する

サーバからのレスポンスを受け取り、クーポンの内容とレジを通した商品の情報を照らし合わせて、即座にPOSレジ上で値引き・無料の適用をします。

ちなみにPOSにバーコードを読ませるのは商品をレジに通すより前でもOKなので、その後にクーポン該当の商品をレジに通せば即座に値引き状態で表示されます


デジタル化とDXの違いが生む顧客体験の差

このスマートなクーポン機能実現の前提に「レジの手間を最小限にする」というファミペイの徹底された方針が見えます

  • セットしておいたクーポンが自動で適用される

  • 「ファミペイで払います」と伝えれば、レジで即決済が完了する

  • 事前に決めておいたTポイント・dポイント・楽天ポイントのいずれかが、購入後に自動で加算される

これらすべてがファミペイのバーコードを提示するだけで完了します。それも一瞬で。

他のコンビニアプリはもちろん、僕は自分が開発に携わっているものも含めて様々な店舗アプリを触ってますが、ここまでスマートな顧客体験を提供しているアプリは希有です。お手本として見習うべきところがとても多い。

これを実現するためにはアプリはもちろん、POSレジにかなり機能を作り込む必要があり、これらと連携するサーバも用意しなくてはいけません。それも全国に16,000店舗以上あり、そのほとんどが24時間稼働しているファミリーマートのPOSレジをです。これに新機能を組み込み、お昼時の超混雑時にもリアルタイムでスムーズに稼働し続けるとか、考えただけで胃がちぎれそうになる大変なプロジェクトです

大変なプロジェクトですが、これがいわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)なんではないかと思います。


紙で提供されていたクーポン、あるいはPOSレジが提供していたクーポン機能をそのままアプリに取り込む(移植する)だけでも、紙クーポンの制作費・配布コストを削減できますしお客さんの利便性も上がります。ですが、これはいわゆるデジタル化です。

デジタル化しただけだとクーポンを1枚ずつ処理するという根本的なところが変わらないので、アプリ化してもレジでのクーポンの処理フローは変わりません。
使うクーポンをまとめて一画面に表示する機能など、UI面での工夫があれば手間はかなり省けるようになりますが、それでも使うクーポンのバーコードを1つずつ全部読み込むところは変わりません。お客さんが10枚クーポンを使いたかったら、バーコードを10回読まないといけない。


ファミペイの場合、単なるデジタル化やUIの工夫を超えて、POSレジを含めた基幹に近いところまで躊躇なく手を入れて企画・設計されています。そうすることでデータ収集やプロセス改善にまでデジタル化やシステム連携の手を入れています。もちろんファミペイのためだけにこれらの改革に取り組んでいるわけではありませんが、顧客接点となるアプリを強く意識した全体設計がされていると感じます。まぎれもなくDXです。

結果、クーポンが一番わかりやすい形で顧客体験を改善していますが、ほかにも会計完了と同時にほぼリアルタイムでアプリに表示される電子レシートや、購買情報と連携して自動で貯まっていくスタンプカードなど、様々なサービスが他社とは一段レベルの違う形でアプリを介して提供されています。本当に見習うべきところが多いです。


まあ、どうやって実現してるかってところは篠キチの想像ですけどね…


アプリだけでDXはできない

弊社のMGReでもアプリ側の機能は作れそうな気はしますが、今回の記事を読んでもらってわかるように、ファミペイのようなクーポンを実現しようと思うと、そもそもPOSレジとそれと連動するサーバの準備ができるかどうかのほうが重要です。

企業がDXに取り組むとき、アプリがその一端で重要な役割を担うのは事実です。欠かせないといってもおそらく過言ではないと思います。

しかし、当たり前の話なんですがアプリだけではデジタル化はできてもDXを進めることはできません。デジタル化もDXの一歩目として必要なステップですが、最終的にDXは企業が全社的に取り組んで変革を進めることになりますし、アプリはその中の一要素でしかありません。


逆にDXプロジェクトにおいてアプリに求められるのは、様々な企業内の変革に対応し連携できるかどうかです。アプリ利用時の行動データを提供したり、企業内のシステムと連携して顧客向けの施策を実行したり、そういった対応ができないとアプリが企業のDX推進をお手伝いすることはできないでしょうし、むしろ足を引っ張ることにもなりかねません。

MGReはオムニチャネル・OMOといった小売向けのアプリ開発の豊富な経験を元に、DX推進をお手伝いできる柔軟な連携・カスタマイズが可能なプラットフォームになっています。お気軽にお問い合わせください。