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アプリの通知バッジに関するお話

メグリでプランニングを担当している篠キチです。


ところでみなさん、アプリの通知バッジって何のことかわかりますか?

©加茂商事(株)

iPhoneの場合、アプリアイコンの右上に丸付き数字でこういう感じに表示されてるアレです。未読の情報があるか、あるいはいくつあるかを示すためのものとして、もうスマホの初期の頃から用意されている機能です。

Androidにも同じような機能が用意されていますが、Appleの場合はヒューマンインターフェースガイドラインにバッジ機能の定義が、Androidの場合は通知バッジ(通知ドット) という表現で開発者向けのドキュメントに記載があります。

いずれもOS側の設定で各アプリのバッジは個別にOFFにできるので、この機能を使えば必ずユーザーに認知されるというものではありませんし、あまりにウザいとOFFにされるどころかアプリごと消される可能性もあります。

またiOSの場合はバッジ内に数字が入るのが仕様なので、件数と関係なく単に未読情報の有無を伝えたい場合でも「1」のように数値ありで表示させることになります。


ちなみに「バッジ」と「バッチ」の呼称が混同されていることが多いんですが、正しくは「バッジ(Badge)」です。
バッチ(Batch) はITの世界ではまとめて一括処理するような機能のことを指していて、全然別物なので注意が必要です。バッジ機能のバッチ処理とか言い出すともう訳がわかりませんが…


数字を出せるのは基本的にiOSだけ

この通知バッジに関して

大事なお知らせだからすべてのお客様に全部見てほしい。だから通知件数を表示して、1件ずつ既読管理してほしい。

という要望をいただくことがあります。大抵 iPhoneを普段使っている方からの要望です。なんでかと言うと、標準で通知バッジに数字が出るのはiOSだけだからです。

Androidの場合はホーム画面のデザインとかUIを決めているランチャーアプリによって数字を出すかどうかが変わったりするので、アプリ側ではどうしようもなかったりします。
Googleが出しているAndroid端末のPixelシリーズも、標準のランチャーアプリでは通知バッジに数字を出すことはできません(アイコンを長押ししたときに件数がわかるようにすることはできる)


というわけで、仮にこの要望に対応するとしてもiOSでしかできないというのが現状です。


送り手側の押しつけになっていないか

まあそういう事情がありますので数値の表示に関してはあきらめるとして、でもやっぱりちゃんとお知らせは全部読んでほしいので、全部読み終わるまで未読ありの状態にしておいて欲しい、という方はいるかもしれません。

僕個人としてはここまで強い要望として直接お話をいただいたことはありませんが、仮にいただいたとしても、基本的にはあきらめていただく方向でご説明すると思います


まず基本的な話として、お知らせを読みたいかどうかを決めるのはユーザー、つまりお客様です
読んでほしいという作り手の気持ちは痛いほどよくわかりますが、だからと言って読まないといけないような仕様にするのはあまりよい方法とは思えませんし、効果はほとんどないと考えています

わかりやすい例として、いまや国民的アプリとも言えるLINEのことを思い出してください。
iPhoneを使ってる人だと、だいたいこんなことになってないでしょうか?

既読スルーも怒られるけど、未読スルーはもっと怒られる

これ僕のiPhoneのスクショなんですが、みなさんもこんなふうに通知件数が出てるにもかかわらず読まないですよね?

LINEはメッセージングアプリなので、読んでないメッセージがあることが分かるようにこういう仕様にするのは理解できます。
ただ、これを見たところで読まない人は読みません。身も蓋もない話ですが、読む必要の無いメッセージの未読が貯まっているだけで見る必要なし、と思われてしまっているからです。

こうなるともう未読通知の意味をなしていません。いま未読24件と表示されている僕のLINEの通知バッジがいつのまにか26件になっていたとしても、僕には前回との違いがわかりません。
このような状態になってしまうと、僕はLINEに新しいメッセージが来たかどうかを、もはや通知バッジで知ることはできないのです。


かといって、この通知バッジの数値を消そうと思うと、LINEを開いて未読メッセージがあるトークを1つ1つ既読にしていく必要があります。
こういう状態になっているとき、仮にユーザーが1つ1つ既読にする作業をしてくれたとして、その内容をきちんと読んでいるとは到底思えません。ただの作業です。

そして、そんなクソめんどくさい作業は誰もやりません。だから僕のiPhoneのLINEアイコンのような状態になってしまうのです。


これは通常のアプリのお知らせについても同じことがいえます。仮に1件ずつ読まないと既読にならない仕様にしたとして、最初に興味を持ってもらえなかった時点でもう勝負はついていて、そのあと読むことを強制してもちゃんと読まれることはないのです。
むしろ、この作業を強制することでアプリに対する不満が募ってしまうことを懸念するべきでしょう


なにをもって「既読」とするか

この通知バッジでユーザーが知りたいのは、アプリを開く前に「前回アプリを開いたときから変化があるかどうか」、つまり「新着の情報があるかどうか」です。

そのため、アプリ上でお知らせや情報の一覧を開いた時点で既読扱いにするのがよいと考えています。

こうすることで、アプリを閉じた後に新着のお知らせが追加されれば、ユーザーは「まだタイトルも見ていない新しいお知らせがある」ことがわかるので、アプリを開く動機を作ることができます

この挙動が最もユーザーが期待する動作に近く、アプリ運営側にとっても新規のお知らせがあることを知っていただき、アプリ起動の動機づけを維持することができるため、バランスがよい仕様と考えています。


よくあるUIとして、一覧画面上に「すべて既読にする」ボタンが用意されているのを見かけますが、このボタンが必要と思っている時点で、「既読を強制したいが、無理がある」と思っているということなので、潔く一覧表示時点で既読扱いにしてしまうほうが、ユーザーに無駄な操作をさせる手間をかけずに済むのでよいように思います。

仕様的に読むことを強制するのではなく、一覧表示されている画面で興味を持ってもらえる書き方の工夫をすることの方が大切ではないでしょうか。



こういったアプリの仕様を考えるのは、アプリばかり作っていて知見も経験も貯まっている我々のようなプロを頼っていただくのが安心確実だと思います。
どんなアプリを作ったらいいかよくわからない、といった段階でも、アプリ開発自体にご興味あればお気軽にお問い合わせください。まだアプリ作らない方がいいと思ったり、LINEのほうがよさそうとか思ったら素直にそう言っちゃう商売っ気の薄いプロが対応いたします。


タイトル画像はぱくたそさんの「なんで既読無視するの?」を使わせていただきました。いや、そんなこと言われても…って感じですが