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日経MJフォーラム 「アプリで顧客体験を向上し、リピーターを育むデジタル戦略とは」|セミナーレポート

※こちらは2021年11月24日に執筆した記事です。

2021年9月27日に開催された日経MJフォーラム「カスタマー・エクスペリエンス戦略~Withコロナ時代の新しい顧客体験~」(主催・日本経済新聞社)で、ランチェスターの代表・田代が「アプリで顧客体験を向上し、リピーターを育むデジタル戦略とは」 をテーマに講演しました。

リピーターを増やすためには、良い顧客体験を提供することが重要。そして顧客体験を向上させるカギはアプリにあるーー。
そう力を込める田代の講演内容をレポートします。

登壇者


株式会社ランチェスター
代表取締役 田代 健太郎

2007年に株式会社ランチェスターを創業。2010年、ANA(全日本空輸)のアプリ開発に携わったのを皮切りに、2013年には「無印良品」のアプリ「MUJI passport」を立ち上げから支援。2017年に独自のアプリマーケティングプラットフォーム「EAP」をリリース、2020年に名称を「MGRe(メグリ)」に刷新し、SaaS型アプリマーケティングプラットフォームとしてリブランディングを実施。オンワードホールディングスやパタゴニアなど小売業の公式アプリを多く手掛ける。


顧客体験の向上を実現する
アプリマーケティングプラットフォーム「MGRe」

みなさん、こんにちは。コロナ禍で生活様式が一変し、人々の行動もさらにデジタル化が進みました。オンライン・オフラインを問わず、あらゆるシーンでお客様にストレスのない購買体験を提供できる仕組みづくりがますます大切になっている状況です。

本日は、このような大きな変化の中でも成果を出されている企業様の事例を中心に紹介していきます。

改めまして、私は株式会社ランチェスターの田代健太郎と申します。2007年に株式会社ランチェスターを創業しました。
2010年、国内でiPhone3GSが発売されたタイミングで、ANA(全日本空輸)の最初のスマートフォンのアプリを開発するプロジェクトに参加しました。それから10年以上にわたってアプリ開発に携わっています。

2013年には良品計画の「MUJI Passport」の開発にも従事しております。2020年に、これまでの受託開発の中で培ってきた「アプリを活用したマーケティング」の機能をセットにした、アプリマーケティングプラットフォームの「MGRe(メグリ)」をリリースしました。

我々ランチェスターのミッションは「企業と顧客のより良い関係を支える」ことです。英語にすると「Make Good Relationship」で、この頭文字を取ると「MGRe(メグリ)」となります。
MGReはアプリマーケティングにおける「アプリの導入」「アプリの運用」「データを用いたPDCAの実現」の3つを、ワンストップで提供できるプラットフォームです。

さらに他のシステムとの連携やカスタマイズに強いのが特長です。アパレル企業様を中心としつつ、他にも様々な業種の企業様にご利用いただいております。

MGReの導入企業 ※一部抜粋

本日のセミナーのアジェンダですが、以下の4つです。

・アプリデータから読み解くコロナ禍の顧客行動
・事例(1)チャンネルを横断したパタゴニア体験とは
・事例(2)ゴールドウインのEC売上に貢献するアプリとは
・事例(3)リテンション80% 自宅とサロンをつなぐアプリとは

まずは、コロナ禍によって顧客行動がどう変化したのかを、アプリのデータを元に解説し、その後、アプリを活用した3つの成功事例を紹介いたします。

アプリデータから読み解くコロナ禍の顧客行動

まず2020年の日本のモバイル市場の概況をお伝えします。
「APP ANNIE」という、アプリのデータのビジネスを展開している企業様のデータをもとに、お話していきます。
下図に5つの側面からデータをまとめました。

■出典:App Annie「モバイル市場攻略法【日本版】」

特徴的な数字としては、まず「アプリストアでの消費支出」が、金額自体もさることながら、対前年比で20%も成長しています。
昨年1年間の中で、スマートフォンのアプリを介して課金をされる方が、全体で20%増えたということです。

スマートフォンが国内に出荷されてすでに10年以上が経ちますが、さらに「ユーザーあたりの1日における消費時間」は平均で3.7時間となっており、対前年比で15%も伸びました。
スマートフォンをさわる時間が増え、その中で何かしらの消費をする方が圧倒的に増加した1年だったと言えます。

次に、MGReの中で取得したデータから特徴的なものを紹介します。
1回目の緊急事態宣言が発令されたタイミングである2020年3月と2020年4月を比較すると、以下の3つの数字が明らかになりました。

・会員証ページのアクセス:最大54%減
・ECへのアクセス:最大55%増
・MAU(月間利用者)数:平均20%減

残念ながら、緊急事態宣言下でアプリの利用者は20%減少したことが、データ上で出ています。
しかしながら、ほとんどの企業様のアプリで、緊急事態宣言が明けた6月以降はもとの水準に戻っていました。

但し、その後の成長に関しては、それぞれのアプリごとに大きな差が出たことがわかっています。
下図はA社とB社という企業のアプリにおける、MAU増減率を比較したものです。

A社のアプリは2020年1月に比べて1年後にはMAUが70%増加した一方、B社のアプリはほぼ横ばいとなりました。この2社のアプリで、なぜこのような差が出たのでしょうか?
両社とも、もともとは「店舗で会員証を表示させること」をアプリの用途としていました。しかし緊急事態宣言後には、アプリの主用途に2社で違いが出たのです。

A社:EC利用にシフト
B社:会員証利用のまま

A社はアプリ内のEC機能の利用をユーザーに促すことに成功し、MAUを増やしました。
A社はユーザーをセグメンテーションして、プッシュ通知やポップアップなどの機能を有効活用していたことも、データから明らかになっています。

事例(1) チャンネルを横断したパタゴニア体験とは

ここからは3つのアプリの具体的な事例をもとに、お話していきます。まず1つ目は、パタゴニア様のアプリについてです。

パタゴニア様は米国カリフォルニアのベンチュラに本社を置かれる、アパレルブランドの会社です。
非常に特徴的な企業なので、ご存知の方も多いと思います。「私たちは、故郷である地球を守るためにビジネスを営む」というミッションステートメントを掲げて、その実現のために本気で取り組んでいらっしゃる企業様です。

昨今ではSDGsの文脈の中で「地球環境に企業がどういった役割を果たせるか」という話が多くあるかと思います。
パタゴニア様はそういった流れが生まれる前から、地球環境を守るためにビジネスがどうあるべきかを追求していらっしゃいます。

以前にパタゴニアのEコマースのディレクターの平田様と、今回のようなセミナーをさせていただいたことがあります。
その中で「パタゴニアが目指すこれからのブランド体験をどのように考えて実行しているか」について、お話をうかがいました。

パタゴニア様とのイベントレポートはこちら

当然パタゴニア様のすべての活動は、ミッションステートメントの実現につながっています。
戦略は「お客様との絆を深めて、価値観を共有することで仲間を増やしていく」ことを目指して、様々な活動をしていらっしゃるとのことです。
そのための具体的な戦術が、みなさまも気になるところかと思います。それは以下の2つです。

戦術①:パタゴニアアカウント
 チャネルをまたいで顧客を認識

戦術②:パタゴニア体験
 一人ひとりに合わせた体験の提供とコミュニケーションを実現

こうした戦術の実行にあたって、アプリをうまく活用していらっしゃいました。アプリによってブランド体験と顧客体験の向上を目指し、アプリを通して4つの機能を提供しています。

①ストーリー:コンテンツを提供する
②カタログ:商品のカタログを表示する
③プロダクト:アプリ上でのEC
④パタゴニアアカウント:オンライン・オフラインを問わずに使えるアカウント

顧客がパタゴニアの商品・ブランドを認知するところから、商品を選択・購入・利用するという一連のプロセスにしたがって、これらの機能を提供しています。
特に重視されているのが「オンラインとオフラインをつなぐポイントにアプリを提供する」ことです。一例を下図に示します。

パタゴニア様はカタログでの通販が事業のスタートでした。アプリ内でもカタログの機能を提供されています。
お客様は、カタログ内で紹介されている商品の詳細をすぐにアプリ内で確認して購入検討いただけます。

高額な商品の場合、店舗で一度試着してから購入したいというニーズがあるので、アプリで店舗の在庫を確認することが可能です。
店舗に在庫があると確認したうえで、来店して試着できます。
店舗で購買の意思決定ができなかった場合には、自宅に戻ってからアプリのEC機能で購入が可能です。

最も特徴的だと我々が思っているアプリの利用方法は「購買後」にあります。
修理サービスやイベントへのご招待など、商品を買った後のお客様との接点に関して、色々な機能や施策を提供していらっしゃるのです。

これまでのマーケティングでは商品を「購買する」部分ばかりが、フォーカスされてきました。
パタゴニア様はブランドとの接点が長い「購買後」にうまくアプリから機能提供することで、多くのお客様に愛されるアプリを実現していると感じられます。

事例(2) ゴールドウインのEC売上に貢献するアプリとは

それでは次に、ゴールドウイン様の事例を紹介いたします。ECにどのようにアプリが貢献しているのかがわかる事例です。

ゴールドウイン様は「スポーツファースト」という言葉を掲げて、多くのブランドを展開しているアパレル企業です。
「THE NORTH FACE」や「HELLY HANSEN」、「canterbury」といったような、多くの方が知る著名なブランドを抱えています。
それだけでなく、「NEUTRALWORKS.」といったトレーニング施設を含めたストアブランドも、展開していらっしゃいます。
ゴールドウイン様は、ECサイトはもちろんアプリにも早い時期から取り組まれていました。

我々は2020年の夏にMGReを提供させていただき、元々使われていた他のアプリプラットフォームからのリニューアルをお手伝いしました。
リニューアルにあたって、ゴールドウイン様からは以下の3つの要望をいただきました。

①店舗での会員証提示をもっとスムーズにしたい
②アプリ内のECのユーザビリティを向上させたい
③ブランドの世界観をより伝えたい

今回は①と②に絞って、詳しく紹介いたします。

まず①の「会員証の提示」についてです。
MGReには「店内モード」という機能があり、お店の中などでアプリを起動していただくと、会員証が標準で立ち上がる設定にできます。
通常はアプリを立ち上げるとコンテンツの画面が表示されるのですが、店内での利用時には会員証機能がすぐに起動するので、店頭でのオペレーションがスムーズになります。

アプリの2回目以降の利用では「店内モード」を便利に使えるのですが、最大の課題はインストール時です。
インストール時にレジ前を混雑させないために「仮会員」という機能を提供しております。
これはアプリをインストールするだけで、会員登録せずに購入直後からポイントを貯められる機能です。これによって店舗でのオペレーションを削減されます。

ただ、仮会員の状態ではポイント利用はできませんので、ポイントを利用する際には会員登録をしていただく必要があります。
会員登録後、店頭でお買い物をした際に貯まったポイントを利用して、そのままECでの買い物を促すことも可能です。

次に②の「ECのユーザビリティ」についてです。
せっかく会員になっていただいても、アプリ内でECサイトへ遷移する際に毎回ログインを要求されてしまうと、購買体験・顧客体験が悪くなってしまうという課題がありました。
そこでアプリの中で一度だけログインをしていただければ、2回目以降はログインを自動化する「自動ログイン」機能を実現しております。

この「自動ログイン」機能に関しては、すでにECサイトで実装されているレコメンドエンジンやパーソナライズ機能も、そのまま使えます。
アプリのECも含めて、顧客体験を一元的に管理できるメリットがある機能です。

この事例では、店舗で購入されたお客様を確実にECの顧客にしていくために「仮会員、本会員、自動ログイン」という3つのステップを踏んでいます。
店頭にいらしたお客様にスムーズに会員になっていただき、さらにEC内でストレスのない体験をしていただくことで、ECの売上アップにつながりました。

事例(3) リテンション80% 自宅とサロンをつなぐアプリとは

3つ目に紹介するのは、アパレルブランドではなく、サロンを展開している企業様の事例です。
先月アプリを使ったユーザーが翌月も使う割合を「リテンションレート」と言います。これから紹介する事例のアプリでは、80%という非常に高いリテンションレートを実現しています。
これがどのような機能によって実現されているのか、ご注目ください。

みなさんの中には、自社アプリを運営されている方も多くいらっしゃるかと思います。
自社アプリのリテンションレートをご存知でしょうか。下図はMGReをご利用いただいている企業様における、MAUの内訳のグラフです。

こちらのグラフのそれぞれの色の部分は、以下の3種類のお客様の割合を示しています。

・上の濃いオレンジ:先月に引き続き今月もアプリを利用(リテンション)
・下の青:今月アプリをダウンロード
・中間の薄いオレンジ:2ヶ月以上前にアプリを使ったが先月は使わず、今月また利用

このように自社のアプリのユーザーがどういったお客様なのかを理解して、アプリの運用をしていく必要があります。
これから紹介する企業様では、濃いオレンジの部分が80%を超えているのです。

こちらの企業では「サロンでの施術」と「自宅でのお手入れ用の商品販売」の2つを行っており、アプリを活用することで2つの好循環を生み出しています。

まずは、アプリでサロン予約が簡単できるようにしました。加えてサロン予約の前日に、プッシュ通知でリマインドする機能も実装しています。
結果、簡単に予約可能になり予約件数が急増しました。
それと同時に、これまで前日に電話で行っていたリマインドが不要になったことで、業務量の削減にも成功しています。

サロンでの施術後は、お客様に自宅でお手入れをしていただいています。その際に読むコンテンツもアプリで提供しました。

さらに来店の翌日に、プッシュ通知でお礼の連絡をするようにしました。
その際にアンケートをお願いすることで、それまでメールでアンケートを送っていた場合と比べて、10倍ものアンケート回収率を実現しています。

それまではサロンの中でしか見られなかった、施術の前と後の肌診断の結果を、アプリ内でも確認できるようにもしました。
これによってお客様に「サロンに定期的に通おう」という気持ちを喚起することが可能になっています。

こういったサロンとご自宅をつなぐ様々な機能とコミュニケーションによって、リテンションレート80%を実現されました。
以下にアプリによる成果をまとめました。

・自動ログインで簡単に予約 → オンライン予約増加
・店舗からの電話確認の削減 → 業務効率アップ
・プッシュ通知でお礼メッセージとアンケートのお願い → DMの10倍の回答率に

この事例では、色々な業務や顧客接点で、アプリが顧客体験の改善につながりました。
その結果、リテンションレート80%という驚異的な数字を実現しているのです。

MGReの特徴 手軽にはじめて段階的な拡張を実現するMGRe

最後に我々が提供しているMGReの特徴に関して、簡単にご説明いたします。
MGReは非常に手軽に始められて、段階的に拡張していけるプラットフォームです。3つのプランをご用意しております。

①エントリープラン
ノーコード でスピーディに開発
最短1ヶ月で自社アプリをリリースすることが可能なプランです。

②スタンダードプラン
MGReとパートナー提携しているECプラットフォームやCRMシステムと標準連携したプランです。
あらかじめ連携済みのシステムをパッケージ化して提供しているため、新たに開発の必要がなく、コストも期間も最小限でご提供でき、短期間でアプリマーケティングのご支援が可能です。
本日紹介したゴールドウイン様にも活用いただいております。

③エンタープライズプラン
MGReとパートナー提携外のシステムや独自の会員基盤との連携が必要な場合にご提供しています。
基本的にはAPIを開放しているシステムであれば連携可能です。
多くのカスタマイズを施したECサイトとの連携も自由に可能です。

MGReはサブスクリプションで提供しております。月額の利用料金は、月間のアクティブユーザー数に応じた従量課金です。
一般的にアプリサービスでは、ダウンロードしたユーザー数に対して課金する場合が多いです。
しかしMGReではダウンロードしたユーザー様の中で、アクティブに使っていただいているユーザー様のみへの課金としております。

本日ご紹介したように、アクティブユーザーとひとくくりにした中にも、以下の3種類のお客様がいらっしゃいます。

①リテンションのユーザー様
②今月の新規ダウンロードのユーザー様
③カムバックのユーザー様

こういった色々なデータや運用状況を元に、どのような施策を打っていくべきなのか、立案することが大切です。
データの分析や施策の立案は、弊社のカスタマーサクセス部門で支援いたします。

いまMGReをお使いいただいている企業様の中で、アプリの専任の担当者様がいらっしゃる企業様は、じつは一社もございません。
弊社のカスタマーサクセス部門で支援しつつ、様々な施策の立案・運用をご一緒させていただいております。

MGReを用いたECや店舗への誘導などに、ご興味のある企業様がいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけください。
本日はご清聴ありがとうございました。

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