【イベントレポート】今、量販店に求められるOMOへの対応とは?
リテール業界では既存顧客の維持と新規顧客とのつながりを強化していくことが求められています。その対策の一つとして、デジタル施策の強化を検討する企業は増えていますが、デジタル(ECやアプリ)とリアル(店舗)は、それぞれに施策を検討しているケースも多くみられ、デジタルとリアルで顧客体験に乖離が生まれている企業も多いのではないでしょうか。これからは、来店促進を目的としてデジタルとリアルを組み合わせてお客様の体験を作っていく必要があり、そのためには、お客さんの行動や志向を把握したうえで、お客さまの求めるサービスを利便性高く提供することが求められます。
本セミナーでは、タッチポイントとして様々なデジタルサービスにアクセスできる入り口としてのアプリの活用方法を、株式会社リテイルサイエンス
デジタルマーケティングチームマネージャー大森さんと弊社の磯崎によるディベートを交えながらご説明いたします。
話し手
株式会社リテイルサイエンス
デジタルマーケティングチームマネージャー
大森 智広 氏
1994年玩具メーカーのトミー(現タカラトミー)入社。
2007年イオン株式会社(その後イオンリテール株式会社)に入社しマーケティング部に所属。
デジタルマーケティング業務を当初一人で0から立ち上げ、アプリ・SNSなど各デジタル媒体を活用した来店促進業務を主に行う。
2019年に現西友社長の大久保恒夫が設立した株式会社リテイルサイエンスに入社。
大久保が掲げる「小売業の社会的評価を高めたい」を理念に、現在、全国の小売業を中心にデジタルマーケティング実行支援を行う。
メグリ株式会社 セールス 磯崎 幸一
スーパー・ホームセンター・ドラッグストア等、量販店業界のフィールドセールス担当。中小企業診断士。
株式会社リテイルサイエンスの紹介
大森さん:株式会社リテイルサイエンスは、1990年に大久保氏によって創業された会社です。大久保氏は元々イトーヨーカ堂の経営政策室出身で、ユニクロや西友など、数々の小売企業の経営再建を手掛けてきました。
また、現代表の川原氏もイトーヨーカ堂出身で、ローソンストア100の代表取締役社長やローソンの社長補佐、成城石井の取締役顧問を歴任し、その豊富な経験を基にリテイルサイエンスでの業務を遂行しています。
このように、リテイルサイエンスはその専門性と経験を活かして、現代の小売業界に立ち向かうための具体的な戦略とソリューションを提供している会社となります。
次に、私大森の自己紹介です。私は2019年4月までの約12年間、イオンリテール株式会社でデジタルマーケティングの業務に従事し、デジタルマーケティング部門をゼロから立ち上げています。
それではここからが、本日のウェビナーの内容になります。
市場状況
量販店、小売業の市場においては、いま大きな変化が起きていると思います。
1つ目は、コロナ需要の終了です。
スーパーマーケットや外食業界はコロナ需要により売上が上がっていましたが、コロナによる需要が落ち着き、売上が下がっているのではと推測しています。
2つ目は原価高騰。商品の値上げや印刷費の値上げ、1番困っているのは光熱費の高騰だと思います。
その他にも、新聞の購読率の低下によるチラシ効果減少、高齢化、労働人口の減少など、
そして、車社会からネット社会への移行も大きな変化です。
かつては郊外に大型スーパーを建設し、広域からの客を集める戦略が功を奏していましたが、スマホやインターネットの普及により、情報の取得から購買までがオンラインで完結するように変わっています。コロナウイルスの影響で、客が感染リスクを避けるためにオンライン購入を好むようになり、この変化は一層加速しています。
これらの変化に適応するためには、企業は戦略を柔軟に見直し、新たな消費者ニーズに応える方法を模索する必要があります。
市場の変化:マーケティングの時代に
マーケティングは、今やお客様のニーズに対応しないと商品が売れない「お客様主体の時代」に対応する手法です。顧客のニーズに応えることがマーケティングの核心であり、顧客の価値観も変わってきています。商品の満足度だけでなく、ブランドの社会貢献などが含まれるようになり、顧客間のコミュニティのつながりや共感を得ることが重要になっています。
情報の供給方法も大きく変わっており、テレビCMやチラシといった不特定多数への情報提供から、SNSを通じた個別へのアプローチが増えています。情報源として企業よりもインフルエンサーや知人、友人を信じる傾向にあります。特に若者は価格訴求よりもSNSでの価値訴求を重視しています。
このような市場の変化に対応することが、小売業にとって最も重要です。この変化とは、顧客のニーズに対応することを指し、このニーズを捉えるためにはデータの活用が鍵です。
多くの企業はデータを持っているものの、それを活用できていないのが現状です。データを適切に活用することで、顧客のニーズを正確に把握し、適切なマーケティング戦略を立てることが可能になります。
お客様ニーズに対応する基本戦略
お客様ニーズに対応する基本戦略は「集中」「差別化」「ローコスト」です。これらは、ターゲットを絞り込んで集中し、差別化した価値を創造し、ローコストを実現するという戦略に基づいています。
まず「集中」については、ターゲット顧客を絞り込むことが重要です。例えば、カード会員やロイヤルカスタマーを中心にマーケティングを行うことで、より効率的な顧客管理が可能になります。また、流行りのニーズに注目し、ターゲットをセグメント化することも有効です。
次に「差別化」では、商品力と販売力を強化することが挙げられています。商品力に関しては、顧客のニーズに応える価値ある商品の開発と調達に重点を置きます。販売力に関しては、効率的な売り場作りやネットとの連携による顧客対応の最適化が重要です。
最後に「ローコスト」戦略ですが、ここでのポイントは低価格競争を避けることです。低コストとは、無駄を省き効率を高めることにより、適正な価格でサービスを提供することを意味しており、企業の利益率を維持しながら顧客への価値を最大化することが目指されています。
ではここでいうローコストとは何かと言うと、それは「オペレーション」を指します。
ローコスト運営について、このセミナーでは、売筋商品の効率的な大量仕入れや、無駄なコストの削減—特に人件費、ネットスーパーやECに関連する物流コスト—に焦点を当てています。経済的な課題が続く中で、売上を増やすだけではなく粗利、つまり利益を最大化する戦略へのシフトが重要です。
ロイヤルカスタマーへの情報発信方法
続いて、ロイヤルカスタマーについてです。
まずは、アプリとSNSの違いについてご説明します。
SNSが不特定多数の人に情報発信をするものであるのに対し、アプリは、顧客がハウスカードを登録することにより、よりパーソナライズされた情報発信が可能になります。
なぜ、ロイヤルカスタマーが重要かといいますと、ロイヤルカスタマーは、わざわざお店に来てカードを作っているお客様です。つまり、自店でより購入してもらいやすいお客様ということになります。
ただし、ロイヤルカスタマーだからといって、自店のみで買い物するわけではありません。そこで、ロイヤルカスタマーへの情報発信が重要になります。
他店で購入している分を、1%でも自店にプラスオンさせる。
このようなアプローチにより、他の店舗での購入を自店舗にシフトさせることが、ロイヤルカスタマー戦略の目的とされています。
量販店・小売業の目指すOMOとは?
次に、今回のテーマでもあるOMO(Online Merges with Offline)についてです。
OMOは、オンラインとオフラインの統合を意味し、店舗とネットスーパーとの融合を通じて、顧客体験の向上を図る戦略です。これにより、店舗とデジタルチャネルの相互運用が可能となり、顧客のショッピング体験を一層便利で快適なものにすることが期待されています。
現在の小売業界では、リアルとネットの間に壁がある状況が多く見られます。これは、企業内でオンラインとオフラインの間に競合が生じ、売上が分散することで相互協力が進まない場合もあるためです。
OMOの概念は、この壁を乗り越えるための戦略です。具体的には、リアル店舗が中心でありながらも、ネットの利用が組み込まれ、店舗のブランドや顧客体験が一体化することを指します。
量販店・小売業の場合は、リアル店舗の中にネットがあるという構造です。
今後、リアル店舗の売上は減少する可能性がありますが、ネットの利用を通じてその減少分を補い、トータルの売上を向上させることが理想とされています。
実際、リアル店舗とネットの両方を活用する顧客は、最もロイヤルな顧客になる傾向にあります。これは、お客様が店舗で買い物をしても、同じ店舗のEC(電子商取引)を利用しても、総体的な顧客体験が向上するからです。
OMO戦略の実施においては、リアルとネットの境界をなくすことが重要です。
これには、アプリカード会員やネットスーパー、ECサイトなどの顧客データを一元管理し、ポイント利用やキャンペーンをリアルとネットで共通化することが含まれます。
具体的にどのようにすれば良いのかを解説します。
この例では、アプリとハウスカードを中心に顧客情報を一元化し、ポイント連携を行います。これにより、顧客はネットスーパーや店舗でポイントを使うことができ、実店舗とネットスーパーの相互利用の促進を進めることが目的です。この実現手段としてOMOを採用し、アプリ開発に注力しています。
しかし、デジタルツールの目的と手段が逆転してしまうケースが見られます。例えば、アプリリリースが目的となり、リリース後にプロジェクトが終了してしまうことがあります。また、安価な提案により、ポイント連携がなされないアプリが開発されることもあります。そのため、常に目的を見失わないよう注意が必要です。
第二のポイントとしては、会員情報の連携があります。多様な業種を持つ企業は、ホームセンターやドラッグストアなど、異なる業体を一元化し、アプリを通じて顧客履歴を分析、ターゲットセグメントとして配信します。これにより、購入データを集め、さらにデジタルマーケティング施策を精度高く展開できる流れを作り出しています。
最後に、データを基にした営業の強化についてです。カード番号を紐付けたデータをデータベースに蓄積し、AIを用いた仮説検証を通じて、顧客のニーズに応じた商品の品揃えや販売方法を強化しています。また、アプリを通じたプッシュ配信で来店を促進し、これが販促力の強化に繋がります。
これらの戦略は、最新のリテールメディア戦略と連携し、業界内での重要性が高まっていると考えられます。今後もこのようなデジタル戦略が多くの企業にとって重要な役割を果たすことでしょう。
最終的には、リアル店舗とネットの統合を通じて、店舗の売上全体が増加するという結果を目指すわけです。
これにより、顧客ニーズに柔軟に対応し、店舗受け取りやネットスーパーの利用を推進することが、さらに重要になってくるでしょう。
量販店・小売業のデジタルマーケティング施策の成功の秘訣
リテールメディアとデジタルマーケティングの成功には三つの重要な要素があります。一つ目はオンライン上のデジタル媒体の活用、二つ目は得られたデジタルデータの利用、そして三つ目は店舗の売場とネットの双方を活用することです。
特に注目したいのは三つ目の要素で、実店舗とオンラインの両方を連携させることの重要性です。このアプローチは、デジタルマーケティングの効果を直接的に店舗の売上へとつなげることができるため、非常に効果的です。
多くの店舗管理者やスタッフは、直接的な売上の向上が見られない限り、デジタルマーケティングの成果に関心を持ちにくい傾向にあります。そのため、デジタルマーケティングの成果がどのように店舗の売上に貢献しているかを明確に示すことが求められます。
よくある例を挙げます。商品Aがデジタルメディアでプロモーションされた場合、商品部と店舗との間でしっかりと調整が行われていなければ、店舗での扱いが適切でなかったり、最悪の場合は在庫がないこともあります。
その結果、顧客がアプリなどで商品Aに興味を持ち、店舗に足を運んでも商品が見つからずにそのまま帰ってしまうというケースが生じます。
ではどうすればいいのか。商品部が売りたいMD計画をデジタル媒体で告知することです。商品部が元々売りたい商品ですから、売り場との調整が不要です。
具体的な例として、ある新商品の柔軟剤をデジタルメディアでプロモーションする機会がありました。スペースの制限でチラシに載せられなかった新商品を、デジタルメディアを通じて告知し、特定の店舗でサンプル配布のキャンペーンを行った事例が紹介されました。
このキャンペーンは非常に成功し、多くのサンプルがほぼ一日で配布完了し、結果的には通常の売上を大きく上回る成果を達成しました。
さらに、このキャンペーン実施店舗と非実施店舗の売上を比較すると、キャンペーンを行った店舗は予測を超える売上を記録し、非実施店舗は目標を割ってしまったという結果に。
この成功を受けて、このメーカーからのサンプル提供が継続されることになりました。
この事例から、デジタル媒体を利用したマーケティングが、物理的な制約を超えて顧客へリーチし、売上向上に寄与する可能性があることが示されました。
さらに、従業員が商品を推薦することも重要であり、全体的な販売戦略においてデジタルと物理的な要素が如何に有効に連携するかがクリティカルであることが強調されました。
デジタルマーケティングの成功には、マーケティング部、商品部、店舗が一体となって取り組むことが重要です。この協力体制が、顧客に対するより効果的なアプローチを実現させます。
AIとデジタルマーケティング
デジタル時代が進む中、AIとデジタルマーケティングの役割はますます重要になっています。特に、AIに関してソフトバンクグループの孫会長が示した「AIは未来予測である」という見解は、この分野の核心を突いています。
孫会長によると、AIの最大の利点は変化に対応する能力にあり、例えば、明日の15時に雨が降ると予測できれば、その時間に傘を店頭に多く並べて販売を増やすことが可能になるでしょう。
一方で、デジタルマーケティングにおいては、「One to Oneマーケティング」がキーポイントとなります。このアプローチの目的は、顧客一人一人に合わせた接客サービスをデジタルの力を借りて実現することです。
例えば、大規模なチェーンストアでは店長や従業員が頻繁に異動するため、長年の常連客でも新しい従業員は顧客の顔を覚えていないことが多いです。
これが原因で顧客との間に摩擦が生じることもありますが、デジタル技術を用いて顧客情報を管理し、個別対応を容易にすることで、これらの問題を解決しようとしています。
私は、デジタルマーケティングの終着点は「デジタル三河屋」だと思っています。
これはデジタル技術を活用して顧客一人一人に最適化されたサービスを提供することを目指しています。
彼は「サザエさん」でお馴染みの、地域密着型の小売店の店主として知られています。顧客の嗜好はもちろん、家族構成や給料日、ボーナスの支給日まで把握していると語るサービスは、まさに顧客一人ひとりに寄り添う究極のカスタマイズを実現します。
デジタル三河屋では、タブレットに顧客の名前を入力するだけで、推薦商品が表示されます。
例えば、「醤油が3日後に切れること」や「健康志向の顧客に高利益商品をお勧めする」といった具体的な提案が可能になります。これらの情報はAIが予測し、顧客に合わせた提案を自動で行うことができます。
また、このシステムは、経験豊富な店主のように、裏口から勝手に入るかのような信頼感を顧客に与えます。
顧客がAIとデータ化を活用することによって、リアルタイムで最適なサービスを受けることができ、「いつもご利用いただきありがとうございます」と自然に感謝の意を表すことが可能です。誰でも三河屋さんのような接客ができるようになるのが理想だと思っています。
量販店・小売業の皆様が1番お客様に近いため、お客様のニーズを早く正確に把握できることが重要です。いわば、量販店・小売業はマーケティング業になることが、目指すべき姿なのだと重み増す。
最後に、私たちが主催する「AI流通革命3.0研究会」についてです。
この研究会は、業界で起きている様々な変化に対応した議論が行われます。年6回開催され、参加費は非常にリーズナブルに設定されておりますので、ご興味がある方は是非参加を検討してください。
本日のウェビナーが少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
ご聴講いただき、ありがとうございました。
トークセッション
質問①「散らしをなかなかやめられないのですが、最近はチラシをやめる企業様も多いのでしょうか?」
大森さん:デジタル化が進む中、チラシをやめてる企業も少なくありません。しかし、高齢者層を中心にチラシを通じた情報収集が依然として行われているため、大手小売業者の間ではまだチラシを完全には廃止できていない事例が散見されます。
チラシを廃止すると売上が下がると考えている店長が多くいます。このため、チラシ配布の効果については、定期的に数値分析を行い、チラシが売上に占める割合を評価し、その影響をシミュレーションすることを必ずお願いしています。
さらに、全店舗での一斉廃止ではなく、試験的に特定の店舗や特定の曜日に配布を停止するなど、段階的なアプローチが提案されています。
また、紙のチラシからデジタルチラシへの移行や、アプリを通じた情報配信など、新しい方法への適応も模索されています。
最終的には、徐々にチラシを減らす方向で進むことが勧められていますが、その判断は様々なデータを基に行われるべきだとされています。この段階的かつデータ駆動型のアプローチにより、伝統的な広告手法とデジタル化のバランスを取りながら、顧客層の幅広いニーズに応える戦略が模索されています。
質問②「ローコスト とは原料縮小も含みますか?」
磯崎:例えば牛乳パックの容量を500mlから450mlに減少させることがローコストに含まれるかどうか。この点に関してはいかがでしょうか?
大森さん:今回はオペレーションの話をさせて頂いたもので、単にコスト削減を意味するものではなく、適正価格と品質維持のバランスを重視すべきだと思います。
具体的な対策としては、オペレーションの効率化に焦点を当てることが推奨されています。これにより、企業はコストを削減しつつも、商品力の低下を避けることができるとされています。このバランスが、現代の小売業界におけるローコスト戦略の成功への鍵となるでしょう。
、セミナーではリアル店舗とオンラインプラットフォームの関係についても話が及びました。特に、Amazonのような企業ではオンラインが主力である一方で、他の小売業者ではリアル店舗が中心であり、その中にEC(電子商取引)やオンラインストアが含まれる形で示されました。ここでの「円サークル」の話題は、売上規模ではなく、企業のサービス展開の重点を表すイメージとして使用されたとの説明がありました。これにより、デジタルとリアルの融合がどのように進められているかの概念が示されています。
このセミナーでは、OMO戦略の実例として具体的なアプリケーションやデジタルツールの利用が詳細に語られ、参加者にとって非常に有益な情報が提供されました。
次に、デジタルコンテンツの管理と配信に関する質問が寄せられました。「1対1での個別対応が多すぎて、配信内容が把握できず、対応が追いつかない」という課題です。この問題に対し、セミナーでの回答は、適切なセグメント分けを行い、その中での配信を進めることが効果的だという提案でした。さらに具体的な解決策が示されなかったことについて謝罪がありました。
さらに、マーケティングオートメーションツールの活用が提案されました。これはIDに基づいてセグメントを定め、配信内容を自動化することで、ルーティンを確立し、配信の効率化を図る方法です。このアプローチにより、複雑で広範なデジタルコンテンツの管理が容易になるとされています。
これらの対応策を通じて、デジタルコンテンツの配信と管理の効率化を図ることが、参加者にとって有益な情報となったことでしょう。
質問③「One to Oneで配信するコンテンツが多くなりすぎて対応しきれないのですが、解決する良い方法があれば教えてください」
大森さん:実は、One to Oneの配信を過剰に行うと、配信している側もどのような内容が配信されているのか把握しづらくなるんです。
配信内容が多岐にわたるため、具体的にどの情報がどの視聴者に届いているのかを把握するのは難しいのが現状です。
実際に配信をしていても、どの視聴者に何が届いているかを把握することができなかったり、チェックができなかったりすることがあります。もし把握が難しいのであれば、配信内容をセグメントに分けて、その中で進めていく方が効果的だと思います。
磯崎:そうですね。もし可能ならマーケティングオートメーションツールなどと組み合わせて、セグメント配信関連の作業をルーティーン化してしまうという手もありますね。そのような取り組みをしている企業様も出てきています。
質問④「さりげないサービスとは言い換えれば痒いところに手が届くサービスなのではないでしょうか」
大森さん:さりげないサービスとは、押し付けがましくないことが大切です。私たちは顧客が実際に欲しているときに、適切な提案をすることで、"欲しかったんだ"と感じてもらうよう努めています。
このアプローチは、顧客に対して自然で、心地よい印象を与えるため、彼らのニーズに対応する形で提供することは「痒いところに手が届く」サービスと言えるでしょう。
磯崎:現代では、リテールメディアやWeb広告が多用される中で、顧客に対して押し付けがましい印象を与えず、その代わりに適切な情報提供を行うことで、広告に対する不快感を避け、より細分化されたターゲットに向けて効果的な配信を行うことが求められています。
顧客の行動履歴や属性情報を活用し、その人にとって有益な情報のみを提供することで、彼らの真のニーズに応え、無関係な情報は排除する方針を取っています。これにより、よりパーソナライズされた体験を顧客に提供し、彼らの期待を超えるサービスを実現していきたいと考えています。
お客様を深く理解し、その理解に基づいて施策を展開することは、我々にとって極めて重要です。
質問④「離反顧客セグメントのお客様で次回以降、購入意欲のあるお客様に対するデジタル販促の良い打ち手があれば教えて欲しい」
磯崎:離反顧客とは、過去には頻繁に購入していたが、最近は購入活動が見られない顧客のことを指します。彼らは通常、詳細なRM分析を通じて特定され、その行動パターンはマーケティング戦略において重要な対象となります。この辺り、大森さんはいかがでしょうか?
大森さん:デジタルマーケティングの分野で、離反顧客セグメントに焦点を当てた戦略は極めて重要です。例えば、クーポンの提供は一般的な方法であり、これには顧客の購入履歴や好みを考慮したカスタマイズが求められます。
磯崎:我々の提供しているMGReというplatformは、顧客一人ひとりに合わせたマーケティングを実現するための革新的な手法で注目を集めています。同社のシステムは、会員基盤と密接に連携し、顧客IDを明確に把握することから始まります。これにより、個々の顧客に対して最適なセグメント配信が可能となり、多くの業界関係者から高い評価を受けています。
さらに、MGReは「マンスリー アクティブユーザー(MAU)」という指標を用いて、顧客の活動状況を把握しています。
この考え方は特に、顧客の継続的な関与が重要なスーパーマーケットなどの業界で役立ちます。例えば、一か月間の利用が途絶えると、その顧客は離反顧客と見なされがちですが、MGReのプラットフォームでは、先月に初めて利用した顧客、先月も今月も継続して利用している顧客、先月は利用していなかったが今月になって利用を再開した顧客など、様々な顧客の動向をリアルタイムで把握することができます。
このような詳細な顧客データの管理は、裏側の管理画面からアクセス可能であり、リアルタイムで数字を取得できるため、即座にマーケティング戦略を調整することが可能です。メグリのプラットフォームにより、企業は顧客一人ひとりのニーズに迅速かつ正確に対応することが可能となり、顧客満足度の向上に直結しています。
現代の消費者市場では、顧客の注意を引き、彼らを店舗に引き戻すための方法が常に模索されています。特にアパレル業界では、顧客との継続的な関係を維持するために、様々な施策が試みられているのが現状です。
さらに、顧客が重要な日(例えば、創業記念日や個人の誕生日など)に関連して、離反顧客を呼び戻すためのクーポンを配信していくなどが、オーソドックスな手法かと思います。大森さんいかがでしょう?
大森さん:配信内容は実際に起業体ごとに異なるため、変化に富んでいます。特にクーポンの利用が多いのが特徴で、ターゲット顧客に対して再購入を促すために様々な形でクーポンを出しています。
具体的には、金額を変えたり、割引率をパーセンテージで設定したりするなど、さまざまなパターンを試行錯誤しています。
この過程で、製品開発サイクル(PDC)を活用しながら、どのクーポンが最も効果的かを絞り込んでいきます。それには、様々なクーポンを試しながら、最終的にどれが最も良い結果をもたらすのかをチームで考えていく過程が含まれています。
この方法では、一つの戦略に固執するのではなく、多岐にわたるアプローチを試すことで、最適な結果を導き出しています。
実際には、最初に思いついた方法が最良とは限らないため、分析を重ねて最適な解決策を見つけることが重要です。このプロセスを通じて、どの戦略が最も効果的かを見極めることが多いですね。
磯崎:なるほど。本日のイベントはこれにて終了いたします。皆様、ご参加いただきまして、ありがとうございました。
まとめ
今回は量販店に求められるOMOへの対応や課題、将来性など様々な観点について、量販店・小売業界を軸に置いたセッションが行われました。リテールメディアの導入や運用について悩んでいましたら、ぜひ当社にお問い合わせください!😊