もしもスーパーマーケットのアプリを作ることになったら(後編)
メグリでプランニングを担当している篠キチです。
書き始めた記事が、話が膨らみすぎて収拾つかなくなってきて、3部作にすることにしたその3本目です。最終章のはずですが、果たして終わるんだろうか…
1本目、2本目はこちらからどうぞ
機種変更の対応をどうするか
中編のシメでポイントカード化したアプリの機種変更についても考えておかないといけないという話をしました
といいつつ、会員登録やログインがアプリ上からできる仕組みが用意されている場合は、機種変更を特に意識する必要はありません。同じアカウントで再度ログインすれば解決するからです。
ただ、中編では「会員登録をあきらめる」という案の話をしていたので、その場合はどうするかという話をしないとさすがにダメかなと。
まず、既存カード番号をアプリに読み込む形で割り切っている場合は、元のプラスチックカードを手元に残しておいてね、という運用が一番簡単です。機種変更後にまた取り込みし直せば済むからです。
実際こういうパターンはいまでも多いですが、うっかり捨ててしまって機種変更した後に必要だったことに気づくという後の祭りパターン、個人的にも実体験として数回あります。取り込みが終わったタイミングでしっかり周知する必要があると思います
実は一番やっかいなのが、前編・中編で紹介したアプリで新しいポイントカードを発行してしまうパターンだったりします。
なぜかというと、移行対象となるポイントカードの情報が機種変更前のアプリ上にしかなく、うっかり機種変更してしまうと移行の手立てを失う可能性があるからです。
アナログな会員登録管理がまだ残っていれば、サービスカウンターとかで人力で救済できる可能性もありますが、それも割り切ってやめてしまった場合は本当に手立てがなくなります。
これについてはアプリに機種変更時の引継をする機能を用意しておくしか解決方法がありません。
そのためアプリプラットフォームを利用して開発する場合は、選定の際に確認しておくべきポイントになると思います。
方法としてよく見かけるのは、事前に引継用のID番号/PIN番号のようなものをアプリが発行し、ユーザーに保存しておいてもらって、機種変更後にインストールしたアプリ上でそれを入力すると復元できるというものです。
10年ほど前に無印良品のアプリ『MUJI passport』で採用されていた方式なので、見かけることが多いのもこれを参考にした事例が多いからではないかと思います。
他にもLINEのソーシャルログイン連携を実装しておき、機種変更の引き継ぎ用に使うなどいくつか方法は考えられますが、いずれも
事前に機種変更に備えた準備を、お客様にしてもらう必要がある
アプリ側に機種変更に対応できる仕組みが必要
という話になってきますので、アプリ開発会社を選ぶ際に注意が必要になりますし、アプリ運用の面でもお客様へのアナウンスを適切に行っていくことが肝要になります
クーポン機能について考える
さて、ここまで3回にわたって延々とポイントカード周りの話をしてきてしまいましたが、そもそも僕が妄想したスーパーには
という設定がありました。
まあスーパーマーケットにせよドラッグストアにせよ、ポイントを貯めることとクーポンを使うことはお客様がアプリを使う主目的なので、このことを考えないわけにはいけません。
クーポンは大きく分けて
提示されたクーポンを回収し、レジで操作をすることで適用される
クーポンに印刷されたバーコードをPOSレジで読み込むことで適用される
の2パターンに分かれますが、どちらもチラシからハサミで切り取ったり、レシートから出てきたものを財布に入れておいたりと手間がかかり、レジで出すときにも手間がかかって難儀します。
これをアプリ化することで煩わしさを解消したいわけですが、逆にいえば利用に手間がかかるようなUIではアプリでクーポン機能を提供する意味が無いことになります。
このUIを考える上で、スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニ等でよく見かけるクーポンについてもう少し理解を深めておく必要があります。
スーパーマーケットは単品クーポンが主流
普段なにげなく使っているクーポンですが、スーパーマーケットやドラッグストアの場合は、特定の商品を対象にしたいわゆる単品クーポンが多いという特徴があります。
そして単品クーポンは1回のお買い物で複数枚同時に利用されることが想定されます。
これがアパレルブランド等のアプリだと、購入価格の10%OFFとかポイント3倍とか、会計額全体に適用されるクーポンが主流です。複数枚のクーポン併用不可というケースも多いです。
アプリUIを考える上で、実際に使われる場面を想定することは非常に重要ですが、クーポン機能のUIはまさにその典型といえます。
セブン-イレブン アプリは複数枚同時使用を考慮したUIを実現しています。
クーポンそれぞれの「まとめて使う」ボタンを押すと、まとめて表示できる画面にクーポンが登録されていき、あとはまとめて使う画面をレジで出すだけ。
この画面には会員バーコードも表示されているので、クーポンを提示した後に会員証画面に切り替える必要も無く、レジでの手間が少なくて済むよう配慮がされています。PayPay支払い画面への遷移も用意されていて便利です
アプリだけでは実現できないクーポンのUX改善
ここからちょっと話が逸れますが、複数枚のクーポンを同時に使う際に不便がないようアプリのUIを考えた事例を出しましたが、実際はもっと使いやすいアプリがあると思った方もいらっしゃると思います。
例として挙げるとファミリーマートさんのファミペイや、スーパーマーケットであればヤオコーさんのアプリのように、使いたいクーポンを事前に選んで決めておけば会計時には会員証のバーコードを出すだけでOKというパターンです。
これは以前ファミペイのことを書いたnoteに詳しくまとめてますが、レジへの会員証バーコード提示だけでクーポンを適用するにはアプリ以外のシステムの開発・連携が欠かせなくなり、実現のハードルが一気に高くなります。
中でもファミペイのように会員バーコードだけでクーポンによる値引きの適用をするのはnoteの記事にも書いたように極めて難しいと考えています。
可能性があるのは、会計時リアルタイムではなく翌日以降など少し間を取ってからクーポンによるポイント還元を行うやり方です。
カタリナマーケティングジャパン社が提供しているカタリナクーポンはこの形態のサービスとしてよく名前が挙がります。カタリナクーポン独自のアプリも出ていますが、各社のアプリとカタリナクーポンがシステム連携してこのようなポイント還元型のクーポンを実現している例もあり、当社にも連携可能か問い合わせいただくことがしばしばあります。
ただ、いずれにしろシステム連携が必要なことには変わりないので、手間やコストを考えるとそこまでの作り込みが難しい場合もあると思います。
そういった状況であれば、セブン-イレブン アプリのようにまとめて利用しやすくクーポンのUIを工夫するだけでも使い勝手は大きく改善します。
まだだ! まだ終わらんよ!
さて無計画に始まったこの連載、無計画に書き進めて、書き終わらないうちから「とりあえず3部作ってことにしとくか」と無計画に前編・中編・後編とタイトルにつけまして、ボリューム的にもそろそろ終わりにしないといけないところなんですが…
…と、我らがクワトロ・バジーナ大尉も声高に叫んでおられます通り、なんとこの記事連載、三部作の第四部に突入であります。
とりあえず次のタイトルどうすんだって感じですが、ここは先人の知恵をお借りして「もしもスーパーマーケットのアプリを作ることになったら(後編 -2)」としてお送りしたいと思います。
ほら、あったでしょ。シリーズ10作目に続編が出て、X-2(テンツー)って名前ついた有名なゲーム。だから大丈夫。知らんけど
というわけで皆さん、この続きは次回「もしもスーパーマーケットのアプリを作ることになったら(後編-2)」でお会いしましょう。
この会社にアプリの相談したら話が長くなりそうだ、と不安になってる方が続出しているという噂もちらほら聞こえておりますが、ご相談くらいならちょっと疲れるくらいでダメージも少ないと思いますので、いつでもお気軽にお問い合わせください