見出し画像

もしもスーパーマーケットのアプリを作ることになったら(中編)

メグリでプランニングを担当している篠キチです。

書き始めた記事が、話が膨らみすぎて収拾つかなくなってきて、とりあえず3部作にすることにしたんですが、その続きの話です。
前編読まないとわけがわからないと思いますので、読まれてない方はまず↓をどうぞ


前編の最後では、既存のポイントカードのシステムを流用しつつ、思い切って会員登録はあきらめてしまうという手もある、という話をしました。


会員情報がなくてもアプリのプッシュ通知は送れる

プラスチック製ポイントカードをアプリ化する動機の中に、「紙の申込用紙をシステム登録するのに手間・時間がかかる」とか「苦労して会員情報を集めても、活用できていない」とか書きました。
また、同じ人が何回もポイントカードを作り直すのを防げないという課題がある話も挙げています。

これらをまとめて、ものすごく極端な言い方をすると、現行の会員情報登録の仕事、捨てても大して困らないのでは? ということです。

勘違いしてはいけないのは、会員システムやポイントカードの仕組みを捨てる話ではないという点です。ぶら下がっている住所や氏名、電話番号などの会員情報の話です。


まず、これらはいわゆる個人情報になるので、保管すること自体にそもそもリスクが伴います。
で、リスクがあるなら相応のリターンが欲しいわけですが、この情報を活用する方法としてすぐ思いつくのは

  • DMを郵送する

  • セールス電話をかける

  • メルマガを送る

くらいではないでしょうか。生年月日や性別の情報を使って、送る内容は変わるかも知れませんが、送る手段はこんなところかなと。

しかしDMは当然印刷代も郵送の切手代もかかり、けっこうコストのかかる施策です。電話も同様。これらにかかる人の手間もハンパない。
しかもスーパーマーケットの場合、メインのお客様はだいたい近所に住んでいて、その中でポイントカードを持ってる人となると、わざわざDMを送ったり電話をかけたりしなくてもそこそこの頻度で来てくださってる可能性が高いですし、そのお知らせしたい内容も通常のチラシに記載すれば事足りる(チラシ自体の効果の話は別として)感じがします。

仕事柄かなりの店舗のポイントカードを作りまくってて、いろんなところに僕の住所とか個人情報を提供しまくってるんですが、僕の記憶が確かならなんらかの会員登録をしている近所のスーパーマーケットからDMが自宅に届いたことは1回もありません。電話もないです。
つまり、DMやセールス電話をコストかけて実施するという選択肢は、少なくともスーパーマーケットの方たちには基本的にないということなんだろうと推測できます


それに比べるとメルマガはDMや電話に比べたら低コストで実施できそうです。僕もスーパーマーケットからのメルマガだったらそれなりに受け取ってるような気がします。読んでないけど。

でも、せっかくアプリを作るのであればコミュニケーション手段はプッシュ通知を活用したいと思うのが人情です。

ここでアプリ開発が得意なアプリおじさんからのお得なマメ知識なんですが、アプリのプッシュ通知を送るために、こういう個人情報的なものは一切不要です
メルマガはメールアドレスがわからないと送りようがないですが、アプリのプッシュ通知はインストールしたお客様が「プッシュ通知を送る許可」さえしてくれれば、それだけでOKです。送れます。

注:Androidはこれまでこの「プッシュ通知を送る許可」すら不要だったんですが、Android13から必要になっています。

つまり、アプリ化を期に会員登録をあきらめる割り切りをしたとしても、メルマガと同じようなことがアプリのプッシュ通知でできてしまうので、それで十分な可能性が高いのでは? ということです。

また、アプリ側はポイントカードの番号を把握しているので、購買情報に使用したポイントカードの番号が入っているなら、購買データを分析して抽出したリストを使ってプッシュ通知を送る(いわゆるセグメント配信)ということも技術的には可能です。


既存会員のアプリ移行をどう考えるか

さて、ここまでポイントカードのアプリ化についていろいろ考えてきましたが、ある重要なことをまだ書いていません。もったいぶってるわけではなく、話が拡がりすぎてこのテーマになかなかたどりつけなかっただけです。すいません。

で、それはなにかというと、すでにプラスチックのポイントカードを持っている人のアプリ移行をどう進めるか、ということです


これもやり方はいろいろあります。

一番簡単なのは、この記事の前編で書いたみたいにアプリを使い始めたら問答無用で新規カードが発行されちゃうようにして、手元のプラスチックカードに残っているポイントは、サービスカウンター等に持ち込んでもらい、手作業でアプリに移すというものです

ポイントを別のカードに移行させたり複数のポイントカードを統合したりする作業は、FAQなどを見るとお断りしていることも多いですが、ポイントカードのシステムとしてこの機能が用意されてないというのはちょっと考えにくいです。イレギュラー対応としてサービスカウンターで都度対処していることも多いと思います。

仮に移行のシステムがなかったとしても、プラスチックカードに貯まってるのと同額のポイントをアプリに手動で付与して、プラスチックカードはサービスカウンターで破棄してしまえば同じことができます。さすがにポイントの手動付与ができないポイントカードのシステムはないでしょうし。

アプリのリリース直後はかなりの負担がサービスカウンターのスタッフの方にかかってしまう点は大きなデメリットですが、時間が経過すれば収束していく話なので、システム的に作り込むことをせずに運用で乗り切る策としては検討の余地はあるでしょう


既存カードを読み取ってくれたら便利?

別のやり方としてしばしばご要望いただくのは、プラスチックカードのバーコードをアプリで読めるようにして、読み取った番号をそのままアプリ用のポイントカードとして取り込むというものです。
もちろん手入力で番号を入れて、そのまま使えるようにしてしまうというのも同様です

これらは技術的には可能ですが、単純に取り込める仕組みには以下のようなリスクがあります

  1. 複数のユーザーで同じカード番号を共有できてしまう

  2. 他人のカードをアプリに取り込んで、カンタンに窃取できてしまう

  3. プラスチックカードの番号を類推して、他人の番号を登録できてしまう

ただ、これらについても状況によっては問題と考えずに割り切ってしまう手もあります。

まず1. についてですが、そもそもプラスチックのポイントカードにおいては、家族での共用を許容している場合があります
ポイントカード発行時に家族に持たせられるように同じカード番号のバーコードがついた子カードを複数枚提供している事例も実際にあります。

これを許容すると不特定多数でポイントカードを共用して不正が…といった心配も出てくると思いますが、不特定多数で共用すると誰がいつ勝手にポイントを使ってしまうかわからないので、冷静に考えると共用するメリットがほとんどありません。家族くらい利害が一致していないと誰もやらないと考えると、対処する必要ないのでは? という割り切りも選択肢としてアリになってきます。


2. や3. については家電量販店のポイントのように1ポイント1円単位ですぐに使えるタイプだとリスク大きいです。これを割り切っちゃうのは問題ありすぎて無理です。
さらに2. はカードそのものを盗んだらバレてしまうのが、カード番号だけ盗んでいるので気づかれずに実行できてしまう点もたちが悪いです

また3. は連番で発行しているパターンならカンタンに誰でも他人の番号を推測できてしまいますし、POSを通すポイントカードの場合は俗にJANコードと言われる、商品にもついている13桁の番号をカードにも使用していることが多いですが、これも付番ルール(チェックデジットのルール)は公開されているので2、3枚カードを集めれば類推できてしまいます


ただ、僕が今回妄想したスーパーマーケットのポイントカードは

100円のお買い物ごとに1ポイントが貯まり、500ポイント貯まるとレシートと一緒に500円のお買い物券が出てくる

という運用でした。スーパーやドラッグストアではポピュラーな仕組みです。

このルールだと、仮に他人のポイントカードを窃取しても、すぐにメリットが得られません
窃取したポイントカードに300ポイント貯まってたとしても、そのあと2万円分自力でお買い物をしないと500円のお買い物券をもらえません。この時点でもうかなり割に合わない。
さらにコツコツと窃取したカードにポイント貯めていったら、もともと持っていた人のほうの買い物で500ポイント達成してしまい、なんのために苦労して窃取したのかわからない事態も起こりえます。まあそもそも窃取すんな、って話ですが。

ようはこの仕組みのポイントカード自体、窃取するメリットがほぼないわけで、であれば割り切ってしまうのもアリでは? ということです。


妄想は果てしなく続く…

このように僕の妄想スーパーであれば割り切った形でポイントカードをアプリ化するのも結構いけそうな感じがしてきました。

と言いながらもう少し考えておかないといけないこととして、既存会員の移行とちょっと似てますが、機種変更の話があります。
ポイントカードをアプリ化する以上、機種変更くらいでポイントが消失したりカード番号がわからなくなっちゃうのはダメなんですが……と、いいところでなんと、またしてもお時間が来てしまったのでございます!

この続きは次回「もしもスーパーマーケットのアプリを作ることになったら(後編)」でお会いしましょう。


ほんとに終わるのか、この話……



そろそろこの会社にアプリの相談してみてもいいかも、と考え始める酔狂な方がでてきてもおかしくない頃かと思いますが、例によってご相談はいつでも受付しておりますのでお気軽にお問い合わせください

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!