見出し画像

突然アプリを作る担当者になってしまったら

メグリでプランニングを担当している篠キチです。


唐突ですが、みなさんはスマホにアプリ何個くらい入ってますか?

MMD研究所の調査によるとインストールしているアプリの平均は19.3個らしいんですが、僕は他社のアプリとかを調査・研究用にインストールしまくってて、さっき確認したら973個入ってました。
そのおかげで毎日特定の時間帯に通知が止まらん! レベルでプッシュ通知来ますし、アプリのアップデートは毎日30件〜50件あるし、スマホのバッテリーも減りが速すぎて実用上問題があるレベルになってます(じゃあ消せよ)

他社のプラットフォームで作られてるアプリとかも軒並みチェックしてるので、展示会などのイベントでたまたまご来場いただいたお客様に

以前は◯◯社でアプリ作られてて、最近◯◯社に乗り換えてリニューアルされましたよね?

みたいなことを言って、ドン引きされたこともあります。すいません、気持ち悪くて


さて、今回は僕みたいに気持ち悪いくらいアプリのことばっかり考えてる人じゃなくて、ごく普通の人がもしアプリ担当になっちゃったら、みたいな話を書いてみます。

結論としては「ムリして自力で決めようとせずに、早めにプロに相談した方がいいですよ」って話なんですが、かといって最初から何も考えずに丸投げもよくないので、そういう前提でじゃあどうすればいいのかって話だと思ってもらえると、間違いがないかなと。


普通の人はどんなアプリを作ったらいいかなんてわからない

まず、前述のとおり普通の人は平均19.3個しかアプリを入れてないので、アプリのことはよくわからないのが当然です。

そんな人がある日突然「うちもアプリ作ることになったから、ヨロシク!」みたいな無茶振りをされたらどうでしょう

たぶんこういう顔になる

アプリを作るといってもいろいろありますが、とりあえず自分で作ろうとか思って勉強し始めるのはやめたほうがよさげです。けっこう難しい。
もし、サクッと勉強してサクッと作れちゃうようなら才能ありすぎるので、もはやアプリ開発の仕事に転職したほうがいいです。っていうか、ウチに来てください


話を戻しまして、まずその無茶振りされた人がたまたまアプリ作りに関わった経験者である確率は低いと思います。普通の人生でアプリを作る仕事に出くわすことはほとんどありません。もし社内に経験者がいたら相当ラッキーでしょう。
なので、アプリを作れと言われても何をしたらいいかわからない、というのは普通のことです。安心してください。


こんなとき、まず最初に取りかかることが多いのが競合調査です。
すでにアプリを出している競合他社をピックアップして、どんなアプリか調べてみます。これは僕もよくやります。

競合他社アプリの機能を調査して一覧化した例

こんな感じに他社のアプリ機能を洗い出して比較表なんかを作ってみると、なんとなくイメージがわいてくる感じがします。

ただ、問題はここからです


とりあえず全部入りで

実際、アプリを作りたいというお話をいただくときに、例に出したような競合他社のアプリ機能を一覧化した比較表はよく出てきます。

そのあと、意外とあるのが

とりあえず、全部実現したいです

というリクエストです。
さっきの表でいくと、A社・B社・C社いずれかのアプリに入っている機能は全部実現したいという話になります。

ポイントカードもスタンプカードもあり、ブログ的な発信もポッドキャストも行い、チャットで問い合わせをリアルタイムで受けたり、チラシもデジタルカタログも用意され、抽選販売も受け付けますし、くじびきもできるし、何ならゲームまでできちゃいます。クーポンはおそらく◎がついてる会社の超リッチな機能になります。

これ、例として極端すぎると言う方もいると思いますが、意外とそうでもないです。こういうリクエストが来るのには、ちゃんと理由があります


機能を削る判断はものすごく難しい

例に挙げた比較表を作った後、すでに競合他社が提供しているアプリ機能を「これは、いらない」と冷静に判断するのは意外と大変です。

まず、いらない理由が思いつきません

この判断を迫られている人はアプリを作ったことがない人ですから、「この機能はいらない」と考えるより、「(アプリを作ったことがない自分にはわからない)何か理由があるからこの機能があるんだろう」とか「この機能はきっと人気があるからこのアプリに入っているんだろう」と考える方が自然です。機能を削ろうという発想にはなかなか至ることができません。


また、これは未経験の人に限った話ではありません。

いまあるアプリを作り直して欲しい、俗に言う「リプレース」のお仕事もメグリは多くいただくんですが(MGRe導入企業の約半数は他社で作ったアプリの作り直し)、このときも「いまのアプリにある機能は全部残して欲しい」という話をされることは結構多いです。


仮に削ろうと思ったとしても、誰かに「これなんでやらないの?」と言われたら困ってしまいます。相手が上司とか偉い人ならなおさらです。
それなりの理由があったとしてもそんなに自信はないでしょうから、サクッと心変わりして「じゃあ、入れておきますね」となりがち。
落とし所としてとりあえず全部機能を入れちゃうというのが最も無難ということになってしまいます。

その結果、全部入りの判断に。意外とあるあるなのです。


難しいことを考える前に

ここまでの話を読んで「そもそも目的や課題がなんなのか考えずに機能から考えてるからダメなんだ」とか、「まずはカスタマージャーニーを描いて顧客を理解するところから始めるべきだ」と言ったツッコミをしたくなる人も多いと思います。

まあそりゃそうなんですが、僕はそれよりも前にまずやってみるべきことがあるんじゃないかと思う派です。


こういう全部入りアプリ的な話が出てくるとき、よくよく話を聞いてみると競合としてリストアップされたアプリを実際に使ってなくて、とりあえずインストールして机上で調査しただけ、ということが多い印象があります。あくまで僕の印象というか、主観ですが。

こんなときの僕のオススメは現場に行って実際にユーザーになる、というものです。それもかなりガチ目なユーザーに。


アプリにポイントカード機能があれば実際に登録しますし、お店でもECでも実際に買い物もします。クーポンも使ってみます。スタンプも押してもらいます。どんなプッシュ通知がいつどんなタイミングで送られてくるのかも見ます。くじ引きがあれば1週間くらい毎日引いてみます。ポッドキャストも聴いてみます。


そうやって実際に現場で使ってみると

  • アプリにポイントカード機能があるのに、レジではアプリを出さずにプラスチックのポイントカードを出している人のほうが圧倒的に多い

  • スタンプカードをレジ担当が処理するのにやたら時間がかかっている。後ろに並んでる他のお客さんがあからさまにイライラしている

  • アプリでクーポンを1枚ずつ、何枚も使おうとして会計にものすごく時間がかかってる人がいる

  • チラシをスマホで見ようとしても、篠キチの老眼が進みすぎてどれだけ拡大しても読めない(個人的問題)

  • 実はポッドキャストは更新されてない。1年前の第3回更新で止まってた。

  • チャットの問い合わせは、ほぼつながらない。チャットで解決にも至らず結局電話することになる。最初から電話でいい。

  • くじ引きは全然当たらない。1週間全くあたらないとさすがにアプリ消したくなる

  • ゲームがつまらない。このゲームやりたさに毎日アプリ起動したりする?

といった気づきや疑問がいろいろ出てきます。「この機能、さすがにいらなくない?」みたいなこともわかってきます。

そうやってまず1ユーザーとしてアプリを使い倒してみることでわかることは多くあります。アプリの使い勝手の面はもちろん、他の人が使っている様子や、アプリが使われている現場のオペレーションがどうなっているかなども気をつけてみていると発見があるはずです。
何人かで同じアプリをしばらく使ってみて、意見を出し合ってみるのもいいかもしれません。


そうすると、例えば単に他社のアプリにあるから必要と思っていたポイントカード機能が、自社で実現する場合にどんな違いや問題が出てくるかとか、もう少し掘り下げた話もできるようになってきます。
競合他社にあるアプリ機能を削るという判断をするにしても、それなりの理由を持つことができるかもしれません。

重い腰をあげ、机を離れて現場を体感する。まずはそれをちゃんとやってみる。
これだけで「どんなアプリを作るか考える」という仕事には大きな差がでてきますし、その作業にスキルはいりません。まあ買い物するお金は必要ですけど。


運用のことを想像してみる

そうやって実際に他社のアプリを使ってみたりして、「この機能は絶対に必要だ」とか「これはいらないな」みたいなイメージがだんだん沸いてきたとします。

このとき、次に考えてみて欲しいのが実際の運用を想像することです。

簡単に言うと、「その作業、誰がするんですか?」 という話です。


例として挙げていたポッドキャスト。これをアプリに組み込んでいる例はそんなに多くないと思いますが、実際にアプリでしか聞けないポッドキャスト配信をして、ユーザーの利用頻度向上につなげたりしてる事例もあります。

これが競合のアプリで人気になっていたりして、実際に聴いてみるとなかなか面白い。「こういうのあると楽しいよね〜♪」みたいな話で盛り上がって、ウチのアプリにも是非! みたいな話、なくはないです。


でも、そのポッドキャスト配信を、例えば毎週30分程度の番組を作るとして

  • 誰がしゃべるのか

  • どんな内容を配信するのか

  • 編集できる人はいるのか

これらが具体的にパッと思い浮かぶでしょうか。
また思い浮かんだとして、おそらくその人は社員でしょうからいま抱えてる仕事があるはずですが、この仕事を追加でやってもらえそうでしょうか。

そして、そのポッドキャストは毎週聴いてもらえる、競合他社の番組と同じかそれ以上に面白いものになりそうでしょうか?


アプリで何をやりたいか、という機能面のリクエストをいただいたとき、この運用面の話がすっぽり抜け落ちていることは結構多いです。
運用が大変なのをわかっていて、それでもあえてチャレンジしてみるのと、単に考えてなかったでは話が全然違ってきます。


僕は自分のスマホにアプリをインストールしまくってますが、それを机上で調査するだけでなく、実際に現場でユーザーとして使うことをかなり意識してやってます。
そうすることで開発者目線とは異なるユーザー目線を忘れないようにしたいのと、現場でしかわからない運用の実態を可能な限り体感して、ユーザーにも現場のスタッフにも使いやすい製品を作れるようになりたいと思っているからです。

クライアント側で運用面の想像や想定ができていないなと思ったとき、アプリ開発の立場でそのあたりの話をして、ちゃんと運用もできるアプリに仕上げられるようプロジェクトを進める手助けができれば、僕としては理想的です。


でも、どんなアプリを作るかは相談して決める

今回の話の結論はこれです。

実際に1ユーザとしてアプリをしっかり使ってみて、運用する人のことを想像できるようになって、アプリのことがだんだんわかってきたとしても、それでもまだどんなアプリを作るか考えて決めるのは難しいと思います。

そこで、どんなアプリを作るか一緒に考えてくれるプロを頼る

そのとき、現場でアプリをちゃんと知り、運用まで想像がめぐるようになっていると、たとえ相手がプロであっても話せる内容が全然違ってきます。
少なくとも思いを伝えることはできるようになっているはずです。

もし、突然アプリを作る担当者になってしまったら、まずアプリを作るプロに相談できるようになるところまで頑張る。これが僕のオススメ案です。


よくあるのは「どんなアプリを作るか自分たちだけで決めてから、アプリ開発会社に依頼しないといけない」という思い込みです。

世の中にはRFP(Request for Proposal:提案依頼書のこと) というのがあって、これにはどんな条件でどんなものを作ってほしいか書かれています。アプリのRFPであれば、どんなアプリを作ってほしいのかという要件が決められています。

会社の決まりでRFPを出してコンペ(≒相見積もりを取る) しなければいけないという話もよく耳にしますし、我々もRFPをもとにした提案機会をいただくことは結構あります。

このRFPをいただいて提案をし発注いただいた開発会社は、当たり前ですがRFPに書かれた要件に沿ってアプリを開発します。
RFPを作成したのがアプリを作った経験がない人かどうかは関係ありません。全部盛りアプリが要件なら、全部盛りアプリを作れる提案をし、全部盛りアプリを作るのが開発会社の仕事です。


つまり、どんなアプリを作るかはRFPができた段階で決まってしまっているので、プロの手を借りるべきなのはどう考えてもRFPを決める前です。

もちろんRFP作成が社内のスタッフのみでできれば理想でしょう。ただ、どんなアプリを作るか決めるのはその会社の人の仕事ですが、それを考えるところで人の手を借りてはいけないという決まりはありません。

そこは、わからない人が集まって無理するところではなく、気軽にプロを頼った方がいいというのが僕の考えです。
メグリではそういう依頼も実際にお請けしていますので、気軽にお問い合わせください。


さいごに

アプリの開発は、家を建てるようなものだと思ってもらうのがいいかもしれません。

家を建てる大工さんや住宅メーカーの人は経験豊富ですが、建てることを依頼する施主さんが家を建てた経験者というケースはほとんどないと思います。

そのとき、施主さんはどんな家を建てたいかいろいろ調べて、思いを伝えることはすると思いますが、そこから先の具体的なプランを考えて提案するのは建築のプロ側の仕事です。

アプリもそれに近いと思います。なので早めにプロに頼ったほうが断然安心です。

タイトル画像はぱくたそさんの「上司の肩を揉んで顔色を伺うリストラ組のフリー素材」を使わせていただきました。

っていうか、ひでえタイトルやな…