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アプリ×Webのおもてなし接客~一人一人の顧客に向き合うパーソナライズされた顧客体験とは~

Webだけではなくアプリ上でも、顧客一人一人に適したコミュニケーションの重要性が増しているいま、アプリユーザーの行動をリアルタイムに分析し、データに基づいたオンライン接客が求められます。セミナーではiOSやAndroidのネイティブアプリ内でポップアップによるマルチステップ型の接客を可能にする「Sprocket App」を提供する株式会社Sprocket 代表取締役 深田様をゲストに迎え、アプリとWebを横断した接客の重要性や、顧客の心をつかむ良い買い物体験など ディスカッション形式でお届けいたします。

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話し手


株式会社Sprocket代表取締役 /深田 浩嗣 氏
2000年 株式会社ゆめみ 創業、2014年 株式会社Sprocket 創業。15年に渡りモバイル領域でのデジタルマーケティングを提供しECを中心に200社以上の立ち上げ・改善を実施。日本古来のおもてなしにおける企業・顧客の関係性に感銘、未来はここにあると確信。テクノロジーを使って現代流にするべく日々試行錯誤。
著書:「いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本」、他。
https://twitter.com/fukadakoji



メグリ株式会社プランナー/篠田 健吾 氏

IT系企業で新規事業の立ち上げに携わり、2014年、株式会社ランチェスターに入社。Webサイト・アプリの分析および企画を中心に、サービスの新規営業にも従事。2020年よりプロダクト開発チームでプランニング担当として「MGRe」の新機能の企画や改善等の業務を担当。

株式会社Sprocketの紹介

深田さん:まず、株式会社Sprocketの紹介をさせていただきます。

株式会社Sprocketでは、「リアルタイム×パーソナライズ」の文脈で仕事をしています。特に、サイトやアプリ内でのコミュニケーションに注力し、顧客体験を構築しています。

■出典:動画より抜粋

最近では、外部のツールベンダー「CDP」を導入し、データを集約する動きが増えていますので、連携させていただく機会も多くなっていますし、アプリ外の顧客とのコミュニケーションツールとしてMA(マーケティングオートメーション)を使用するケースが非常に多くなっています。

これに伴い、配信状況を踏まえたコミュニケーションを構築することが増えています。私たちはこのような「オンラインの店員さん」としての役割を担うことを目指しています。

現在のオンライン体験は、無人の店舗のような状態が多いと感じています。お客様は自分で情報を探しながら目的地に向かいますが、途中で迷ってしまうとそのまま離脱してしまうことが多いです。データを分析すると、このようなお客様は迷いや悩みを抱えていることが見えてきます。

これらのデータを活用して、お客様に声をかけたり、その反応をデータとして活用することで、コミュニケーションを最適化するといったことをしています。

■出典:動画より抜粋

今日は特にアプリ領域についてもお話しします。

昨今、ブラウザ部分とアプリ部分の両方を活用する事業者が増えています。私たちも両面をしっかりと追いかけ、お客様のデータを統合管理し、一貫性のある施策の実施や行動の分析ができる仕組みを提供しています。

■出典:動画より抜粋

特徴としては、パーソナライズされた接客体験を実現するためのマルチステップ型のWeb接客を提供しています。

右下にポップアップが表示されていますが、これはお客様に声をかけるアクションです。このとき、説明を聞いてもらうための許可(パーミッション)を挟むことにより、お客様はその後の説明をしっかりと聞いてくれます。

長めの説明動画を置いても、じっくりと見てくれた結果、商品が欲しくなり、購入する方が増えるという効果も確認されています。

他にも様々な体験を提供しながら、新規顧客の獲得やリピート顧客の支援を行っています。

私たちのこだわりとして「ツールだけでは価値提供ができない」という課題に、創業以来向き合ってきました。

ツールの導入や使い方の習得後に費用対効果を出すことが難しいというギャップを感じています。

■出典:動画より抜粋

このギャップを私たちは「死の谷」と呼んでいますが、費用対効果が出せずに途中で解約されるケースは、私たちの領域に限らずデジタルマーケティング全般でよく見られる問題です。

リソースが不足していたり、ノウハウが不足していたりするお客様が多くいらっしゃいます。そのようなお客様に対して、私たちはビジネスをどう展開するかを考え、必要な場合はこちらからも積極的にテストを回す支援体制を整えてきました。

■出典:動画より抜粋

気がつけば、社内だけでも7万回以上のテストを繰り返し、その結果としてノウハウをしっかりと蓄積することができました。そして、安定して価値を提供できるようになりました。

■出典:動画より抜粋

Eコマースのツールの費用対効果としては、平均で15〜16倍の売上リフトアップを実現しています。新規顧客獲得においては、CPA(顧客獲得単価)が目標の1/4程度に抑えられています。このように、安定して成果を出すことができています。

最近では、顧客育成に関する相談も増えてきています。私たちの業務はこれまで、新規顧客獲得やリピート顧客のコンバージョンといった分かりやすい領域が中心でしたが、現在はお題の幅が広がっていると感じています。

広告費の上昇による新規顧客獲得コストの増加が背景にあると考えています。

■出典:動画より抜粋

顧客育成には、ロイヤリティプログラムやメルマガ、ファンコミュニティなどさまざまな方法がありますが、どれを選ぶべきかは難しい問題です。

さらにこの問題を難しくしているのが、顧客育成をどう測るかということです。

■出典:動画より抜粋

一般的にはNPS(ネット・プロモーター・スコア)やLTV(顧客生涯価値)、RF分析などが用いられますが、これらは長期的な結果指標であり、施策の評価には向いていません。

したがって、育成の方法論が分からないというのが最大の課題であり、どうやって顧客を育てたらいいのかが見えてこないのです。

そこで、私たちは自分たちにできることから始めようということで、ユーザーの行動データを活用し、何か手がかりを見つけようと特にこの1年ほど取り組んできました。

■出典:動画より抜粋

育成を考えるにあたり、様々な指標で顧客行動を分析しました。

例えば、お気に入り機能の利用や商品のこだわり、ブランド理念に関するコンテンツなどを見ていくと、再訪する顧客としない顧客で大きな差があることが分かりました。

■出典:動画より抜粋

さらに細かく見てみると、初回コンバージョン後にリピートされた方とされなかった方での機能利用率にも大きな差がありました。

例えば、リピーターの検索機能利用率は10倍、お気に入り機能の利用率は32.5倍も差が出ています。全体で見ると、検索機能を使っている人は4.3%、お気に入り機能を使っている人は0.25%しかいません。スマホサイトのハンバーガーメニューの利用率も3%程度です。

このように、行動データを見ることで、育成を表す指標に大きな差があることが分かってきました。

いくつかの顕著な行動差が見られる指標をピックアップし、その順番やタイミングが気になるわけです。

例えば、訪問回数や累計滞在時間、累計PV数などのデータをプロットし、どのタイミングでどの行動が行われるのかを分析します。

■出典:動画より抜粋

すると、商品の検索は比較的早い段階で行われますが、お気に入り登録や無料会員登録は中盤、アプリのダウンロードや企業主催のイベント参加などは後半に行われることが分かります。

こういった行動データを基に、育成の度合いを表現する指標を設定し、ライト、ミドル、コアといった段階を考えます。

■出典:動画より抜粋

次に、それぞれの段階で重要な行動を調べます。例えば、ライトからミドルに移行するためにはオンラインカウンセリングが効果的であり、ミドルからコアに移行するためにはアプリのダウンロードが重要であることがデータから明らかになります。

このような取り組みを進める中で、育成に効果的な行動促進には以下の3種類があることが分かってきました。

■出典:動画より抜粋

これらの方法を通じて、ユーザーの行動を促進し、育成の度合いを高めていくことができると考えています。

■出典:動画より抜粋

ライト、ミドル、コアといった段階ごとに、どの行動を取ってもらいたいかが見えてくると、それぞれの段階での行動率を上げるための施策を考えることが可能です。

例えば、ライト層では検索機能の利用を促し、ミドル層ではお気に入り機能、コア層ならオンラインカウンセリングを利用してもらうなど、段階ごとに特有の行動をピックアップして利用率を確認する方法は、全ユーザーに対しても適用できます。

これにより、どの段階の顧客に対してどのような行動を促進し、それをどう評価するかが見えてきました。

こういった施策を回しながら仮説検証を繰り返すことで、どの層に対してどのような行動を促進すれば育成に繋がるのかを明らかにし、全体のプロセスを最適化できるようになってきています。

顧客育成は非常に難しいテーマであり、何をすればよいのか分からないという課題もあります。

しかし、行動データを読み解き、施策を実行し、その結果を見て改善するというPDCAサイクルを回すことで、育成のためのメソッドが整いつつあります。

行動データの活用が顧客育成の鍵となることをお話しさせていただきましたが、具体的に何を見ているのかについてもいくつかご紹介いたします。

お客様の心理を理解するためには属性情報だけでは不十分であり、行動をしっかりと観察することで理解が深まります。

■出典:動画より抜粋

例えば、初回購入した方とまだ購入していない方の行動の差分を見てみると、購入した人はブランドの特徴ページを見ているが、購入していない人はそれを見ていないということが分かる場合があります。ここが重要なポイントになるかもしれません。

■出典:動画より抜粋

さらに、ユーザーの経路にも着目することが重要です。例えば、広告から来てすぐに商品ページにたどり着いた人は、購入意欲が高い可能性があります。一方で、メルマガを経由して様々なページを見た後に商品ページにたどり着いた人は、まだ他の商品も見たいと考えているかもしれません。こうした背景に基づいて、適切な施策を考える必要があります。

リアルタイムの状況も重要です。例えば、トップページに来たものの直帰してしまう人が多い場合でも、その離脱の仕方には違いがあります。しばらくサイト内をうろうろした後に離脱した場合、探している情報が見つからなかったり、不安を感じた可能性があります。

■出典:動画より抜粋

このように、お客様の行動データを積み重ねて分析し、それに基づいた施策を行うことで、より正確な顧客体験を構築することができます。

一方的な売り込みではなく、お客様に寄り添ったアプローチが重要です。対面で自然に行われることをオンラインでも意識的に実行することで、顧客体験は大きく変わります。

最後に、我々の会社について簡単にご紹介させていただきます。私たちは「ツールベンダーを超えていこう」という目標を掲げ、ユーザーの行動に基づいたマーケティングを支援しています。単にツールを提供するだけでなく、リソースやメソッドも併せて提供することで、包括的なサポートを行っています。

■出典:動画より抜粋

ツールとしては、パーソナライズ機能を備えたマルチステップWeb接客、ページをパーソナライズするためのコンテンツ埋め込み機能、A/Bテストや様々な分析機能などがあります。また、様々なデータと連携することも可能です。

しかし、ツールだけでは使いこなせない場合もありますので、専任のコンサルタントが伴走し、広範囲にわたるサポートを提供しています。

内製化も支援しており、ノーコードで使える管理画面を提供していますので、皆様にもご利用いただけます。また、豊富なナレッジやノウハウ、メソッドを皆様に提供し、成果が出るまでのスピードを高め、同じような検証を繰り返さなくて済むようにしています。

株式会社MGReの紹介

篠田:では株式会社MGReのご紹介をさせていただきます。まず、私の簡単なプロフィールですが、プロダクト部でプランナーをしております。製品企画を担当している部門です。

2014年に株式会社ランチェスターに入社し、当初は受託開発の会社だったため、Webサイトやアプリの分析を担当し、営業も経験しました。2020年からはプロダクトのプランナーとして、製品改良に注力しています。

■出典:動画より抜粋

次に、弊社のミッションは「企業と顧客のより良い関係を支える」というもので、「Make Good Relationship」の頭文字を取って「MGRe」と名付けました。

プラットフォームの名前も「MGRe」で、アプリ作成プラットフォームです。単にアプリを作るだけでなく、アプリを使って様々な施策やマーケティングを活用できるようにしています。

■出典:動画より抜粋

弊社の特長は、特に小売業向けに特化した便利な機能を多く提供していることです。

これらの機能を組み合わせるだけで、すぐにアプリを作成して活用することができます。簡単な管理機能を使って誰でも活用できるようになっており、プッシュ通知や情報配信(ニュース機能)、クーポンの管理などが簡単に行えます。

また、施策の結果を分析できるダッシュボードやインサイト機能も提供しており、次の施策を考えることができるようになっています。

導入実績についてですが、アパレル業界の事例が多くなっています。導入実績の半分ほどがアパレル業界のものです。しかし、最近ではスーパーマーケットやドラッグストア、アニメイトさんやサンリオさんなど、日常的な店舗でも導入が増えています。

パフォーマンスとしては、アクティブユーザー数が月に900万人を突破しており、導入社数は現在約60社に達しています。サービス開始から50ヶ月間、解約0で推移していましたが、最近解約がありました。しかし、それでも長くお付き合いいただけるサービスとなっていると考えています。

■出典:動画より抜粋

「MGRe」が選ばれる理由として、まずプロダクトの質があります。小売業向けに特化した洗練された機能を標準で備えており、すぐに最適なものを提供できる点が評価されています。

また、プラットフォームの拡張性も担保しています。一般的にプラットフォームは既存の機能をすぐに使える一方で、カスタマイズが難しいことがありますが、我々は設計を工夫することでこの課題を克服しています。

例えば、ECサイトや会員システムとの連携が必要な場合も、柔軟にカスタマイズできる強みがあります。このような連携には開発力やプロジェクトを進める力が求められますが、当社は10年以上の受託開発の経験を持つ豊富なスタッフがサポートしていますので、問題なく対応できます。

さらに、導入して終わりではなく、カスタマーサクセスの一環として導入後のお手伝いをしています。ビジネスが成長するようにアプリを活用していただけるよう、サポート体制を整えています。

直近では、行動データの取得が重要になってきています。アプリの分析・計測においてもGA4(Google Analytics 4)に標準対応しているため、アプリの行動データの取得が非常に簡単です。

GA4を経由してBigQueryにデータを送ったり、独自の行動データを取得してダッシュボードで分析することも可能です。また、各種CDPやMAとも連携できるため、柔軟なデータプラットフォームへの接続が可能です。

トークテーマ①「アプリでどのようにオンライン接客を活用するのか」

■出典:動画より抜粋

篠田:顧客育成の課題に関して、アプリはリピーター向けのチャンネルだと認識しています。リピーターであればあるほど、使う機能が増えてくるという話には納得感があります。私も非常に勉強になりました。

逆に、それをどう伸ばしていくかを考えると、やはりデータが重要になるのかと思っています。行動データを取得し、インサイトを見ていくことが必要ではと思うのですが、いかがでしょうか。

深田さん:行動データの読み解き方はアクセス解析とは大きく異なります。ページ単位で見るのではなく、ユーザーがどの順番で何をしたのかを見ていくことが重要です。考え方を切り替える必要があります。

もう一つ難しいのは、ユーザーの行動を見た時に、1人1人のユーザーのデータだけでは全体の改善に繋がりにくいという点です。そこで、中間行動を把握することが重要です。株式会社Sprockeでは、その経路分析をデータから迅速に出せるツールを裏側で作っています。

例えば、コンバージョンした人が途中でどんな行動をしたのか、その代表的な中間行動をすぐに出せます。そして、それをどの順番で行ったのかも同様に出せます。

このように、大まかにどの経路をたどってゴールしている人が多いのかが見えてきます。この辺りは読み解きのコツが必要ですが、ファネル的な考え方を取り入れ、どの行動をピックアップして見ていくのかを選ぶことが非常に重要です。

何を選ぶべきかについては試行錯誤しながら進めることになりますが、最初はお気に入りやカートに入れるといった一般的な行動をピックアップして追いかけるのが良いと思います。

篠田:中間行動の差を把握するためには、個々のユーザーの行動を追いかけすぎると夢中になりすぎてしまうことがあります。全体の方向性を把握するために一定のクラスターの行動パターンを見たり、中間行動の大きな違いを見出すことは、GA4だけではこれを行うのは難しいですね。

ダッシュボードでは単純なアクティブユーザー数などの分かりやすい指標を提供できますが、目的を持って分析するのは難しいですよね。

深田さん:そうですね。これらの分析や施策の考案には、専門的な支援が必要です。SQLが書ける能力や、行動データの塊から何かを引っ張り出す仕組みがあると良いでしょう。弊社の場合は、そういったことを代わりに行いますが、今後、行動データを読み解くためには一定の支援が必要になると思います。

深田さん:分析も重要ですが、その後に具体的な施策を考え、実行することもハードルが高いと思います。施策を実行するための対応策を考えるのも難しいです。

篠田:ある程度分析ができたら、次に何をするかというのは非常にハードルが高いと思います。その部分でもツールだけでは解決しないという話は非常に興味深いです。

私たちもカスタマーサクセスの部分では、アプリを使って何をしたら良いか分からないお客様が多いです。アプリの運用経験が少ないお客様がほとんどなので、初歩的な部分のお手伝いをすることが多いです。

しかし、そこからステップアップして次の段階に進む時には大きな壁があります。これが先ほどお話しのあった大きなギャップの部分かなと思います。現状では、ノウハウやツールを持った専門家のサポートを得ることが一番効率的だと感じています。

深田さん:アプリのお客様だと、アパレルの会社さんが多いというお話しでしたが、ロイヤリティの高いお客様がアプリをダウンロードするケースが多いのでしょうか?

篠田:仰るとおりです。新規のお客様はWebで集客し、2回目も広告で来ることが多いので、リピーターになっていただき、ファンになっていただくことが重要です。定期的に購入していただきたいという思いがあります。

深田さん:先日、ある会社のデータを見ていて面白かったのは、無料の会員登録よりもアプリのダウンロードの方が早い人が多いということです。ユーザーによっては、会員登録よりもアプリのダウンロードの方がハードルが低いということもあるのです。

篠田:そうですね。我々もよく行っているのは、会員登録を後回しにする方法です。仮の会員IDを発行し、例えば「今日のお買い物のポイントが貯まるので、すぐにアプリを入れてください」といった動機付けを行います。

その後、「貯まったポイントがもったいないので、正式な会員登録をしましょう」と案内するパターンがあります。

深田さん:そうですよね。この辺りはサイトの構造によっても変わってくると思います。どの段階のお客様にアプリをお勧めするべきかを見ていくと、非常に興味深いと思います。

篠田:なるほど、はい、今ちょっと質問をいただいてまして、「オンライン接客の重要性、1番のメリットは何ですか?」というご質問をいただいています。

深田さん:それについてお答えします。ユーザーの立場からすると、自分で探せないものを見つける支援を受けられることがメリットだと思います。

現在のオンライン体験は、完全にセルフサービスが基本になってしまっています。これが当たり前のようになっていますが、実際には多くのコンテンツや機能が十分に活用されていません。これは見たくないから見ていないのではなく、気づいていない、または意味が分かっていないことが多いのです。

例えば、ハンバーガーメニュー(3本線のアイコン)が押せることを知らないユーザーが多いのです。これに対して、吹き出しなどで「この3本線を押すとメニューが開きます」と案内すると、利用率が大幅に増えます。こうした基本的な部分から伝えることで、ユーザーの体験が大きく変わります。

篠田:スマホの画面が小さいことも一因としてありますよね。

深田さん:お気に入り機能も同様で、どのサイトにもある機能ですが、利用率は非常に低いです。しかし、購入しているユーザーに絞ると、半分ぐらいが利用しています。この差は非常に大きいです。リピーターや購入者は機能を高頻度で利用しています。

こういったことから、ユーザーに対して適切にディレクションすることが重要です。利用しないユーザーには特に注意が必要で、非常にもったいない状況です。逆に、適切に案内すれば大きな効果が得られます。

篠田:なるほど、ありがとうございます。では、次のテーマに移ります。

トークテーマ②「お客様の心をつかむ顧客体験とは」

■出典:動画より抜粋

篠田:先ほどアパレルがターゲットとして多いとお話しいただきました。心を掴むだけでなく、心を離れないようにすることも大事だと思っています。アパレルでは年に3〜4回の購入が一般的のため、お客様に対し「毎日買ってください」と言うのは現実的ではありません。

そのため、買わない日のお客様に対してどのような顧客体験を提供するかが重要だと思います。この点について深田さんのご意見をお聞かせください。

深田さん:そうですね。先ほどスライドでもお見せしましたが、ブランドの考え方やこだわり、何を実現したいかといった世界観を伝えるコンテンツが意外と響くことがデータから見えてきました。

以前はブランディング系のコンテンツは意味がないという意見も多かったのですが、最近ではそういったコンテンツが購入やリピートに効果があることが分かってきています。これは世代の話やSDGsが浸透してきた背景もあるのかもしれません。

このように、お客様に「このブランドから買う意味」を理解していただくことが重要です。ブランドの世界観やこだわりを伝えるコンテンツは、読んでいない方にもぜひ届けるべきです。お客様の心を掴むためには、こうしたコンテンツが非常に強力です。

篠田:製品の具体的な特徴だけでなく、ブランドの考え方や世界観を伝えることが大切なんですね。

以前、あるコンビニの方と話をした時に、「おでんの糸こんにゃくの断面をご存知ですか?」と言われたんです。

丸ではなく、丸を3つ繋げたような形をしていて、そうすることで出汁がよく絡むそうです。こんな話、つまらないだろうと言われましたが、私はとても面白いと思いました。

それこそ「その話をコンテンツにしてください」とお願いしたことがあります。その頃は、商品の特徴を伝えるストーリーが大事だと思っていましたが、最近はブランドの考え方に興味を持ってもらえるようになってきたのですね。

深田さん:そうですね。なぜその事業をやっているのか、何を実現したいのかという意味でのブランディングを気にするお客様が増えてきているように思います。

例えば、送料や会員登録が必要かどうか、いつ届くのかといった当たり前のことが気になり、離脱してしまう方が多いです。このような不安を解消するような接客をすることで、コンバージョンレートが上がるというセオリーがあります。

しかし、あるサイトでは世界観を訴求する施策の方が効果的でした。SDGsにこだわる会社で、生産者に対しても配慮し、搾取しないで物を作っているということを強調しました。

カートでその生産者の顔を見せ、「こういう人たちが作っています」と訴求したところ、効果が高かったのです。このようなタイプの施策が、従来の方法よりも効果があることに驚きました。

篠田:ありがとうございます。質問が来ているので読み上げます。「ブランディングコンテンツが意外と刺さるとのことですが、他にも意外なコンテンツが刺さった事例はありますか?」とのことですが、いかがでしょうか?

深田さん:意外なコンテンツということではないかもしれませんが、一例としてアプリダウンロード施策についてお話ししましょう。ECサイトの場合、ユーザーにアプリをダウンロードしてもらうために、どのように訴求すれば良いのかを考える必要があります。

一般的に、アプリをダウンロードするとポイントがもらえるキャンペーンを実施することが多いですが、実際には「このアプリで何ができるのか」を訴求する方が効果的なことが多いんです。

多くの事業者は、ユーザーがアプリの存在を知っている前提でキャンペーンを実施しますが、実際にはアプリの存在やその機能を知らないユーザーが多いのです。

ですから、まずはアプリの利便性や特徴をしっかりと伝えることが大事です。

篠田:確かに、アプリの存在を知らないとポイントキャンペーンの訴求は響きませんね。

深田さん:その通りです。アプリの存在を知らない人にいきなりキャンペーンを訴求しても効果は薄いです。アプリの存在とその利便性を伝えた上でキャンペーンを訴求する方が効果的です。

これはクーポン施策でも同じです。トップページでいきなりクーポンを提供するのではなく、ある程度検討しているユーザーに対して「実はクーポンがあります」という形で訴求する方が効果的です。

篠田:なるほど、アプリがそもそも存在していること、機能や利便性をまず伝えることが大事なんですね。

深田さん:そうですね。特にリピーター向けのチャンネルとしてアプリを活用する場合、その機能をしっかりと伝え、継続的にコンテンツを提供することが重要です。リピーターは特にそうしたコンテンツを求めていますし、プッシュ通知などを活用して定期的に情報を届けることが効果的です。

篠田:ありがとうございます。では3つ目のテーマに移らせていただきます。

トークテーマ③「行動データを可視化することで何が実現できるのか」

■出典:動画より抜粋

篠田:では、3つ目のテーマに移ります。「行動データを可視化することで何が実現できるのか」についてです。まず、行動データをどのように補足するかという話もありますが、最近ではGA4が主流になってきている気がします。

この辺りですが、例えばMAのサービスでは独自のSDKを入れてくださいとか、GCPでローデータをくださいといったパターンがあります。御社の場合、データをどのように取得していますか?

深田さん:収集方法としては、基本的にアプリの場合はSDKを入れていただき、そこからデータを取ります。ブラウザの場合は、ページにタグを入れていただき、そこからデータを収集します。

篠田:なるほど。私たちもSDKの組み込みや案件をいただくことが多いですが、行動データを送る場合は、ユーザーIDを紐付けて送れるかどうかが重要です。私たちはこの点に強みがありますが、他の方々は実装に苦労されることが多いようです。

依頼をいただくことも多く、その理由の一つに他ができなかったからというケースがあります。

会員認証などを行わないとどうしようもない場合もあって、意外とハードルが高いと感じますね。

またダッシュボードについて質問が来ているので、「MGRe」のダッシュボードについてお話しします「MGRe」のダッシュボードは、GAなどでよく見るようなアクティブユーザー数や、会員連携に特化したデータを可視化しています。

例えば、ゴールドランクなどの会員ランクやお客様の属性を分類し、新規ユーザーや毎月アクセスしているアクティブユーザー、離脱後に戻ってきたユーザーなどを確認することができます。

また、スクリーンごとのアクセス分析も行っていますので、Webでよく見られる基礎的な指標を一通り可視化することができます。

深田さん:BIツールとの連携についてもお聞きしたいのですが、いかがでしょうか?

篠田:アプリを導入したばかりのお客様には、まず基本的な数字を見てもらうところから始めることが多いです。

逆に、すでに経験豊富な企業やCDPを導入している企業に関しては、特定のフォーマットで連携してくださいというご指示をいただくこともあります。そういった場合でも、我々は対応できる強みがあります。

我々はアプリを始めるお客様にとって必要なものを一通り揃えているつもりです。ステップアップする際には一緒に組んでいただいたり、「何かあれば相談してください」という形でサポートも提供しています。

アプリだけでは完結しないケースも多いですので、購買データや行動データを統合して見ていく必要があります。

深田さん:そうですね。我々はその両方を横断できる点が一番の強みだと思っています。可視化のメリットとしては、アプリだけでなくブラウザも含めた一貫性を持ったデータ分析ができることです。

例えば、最初の流入はブラウザからが多いですが、そこからどうやってアプリに誘導するか、手前で何をするかなどを見ながら最適化していくことが重要です。

篠田:特に私たちのアプリは小売系でよく使われているので、取得できる行動データのメリットとしては、リアルな店舗でのデータが取得できる点だと思います。

オンラインだけでなく、ECサイトでも急に訪れて、急に購入して去ってしまうお客様がいますが、実際には店舗に行って事前に商品を吟味していた場合もあります。こういった行動を把握し、共有できると良いと考えています。

深田さん:なるほど。リアルでの活用ができるソリューションとして、アプリ以外にビーコンなどがありますが、それらを組み合わせて活用することも多いのでしょうか?

篠田:最近ではビーコンに対するクライアントの興味も増えてきました。リテールメディアの概念も出始めており、店舗での行動データを把握し、次に繋げる意識が高まっていると感じます。

深田さん:なるほど、面白いですね。

篠田:はい。あっという間に時間が過ぎてしまいましたが、これまで質疑応答も随時させていただいたので、以上で本日のトークセッションを終了させていただきます。ありがとうございました。

深田さん:ありがとうございました。