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OMOを成功させるリアルなお話| 今求められる顧客とのつながりとは? | セミナーレポート<パート3>

株式会社顧客時間 共同CEO/取締役の奥谷 孝司 氏をゲストに迎えた共催ウェビナー【今求められる顧客とのつながりとは?】。OMOの成功事例から失敗談まで、海外事例を交えて紹介しました。

今回は、セミナーレポート3部作としての第3部、『OMOを成功させるリアルなお話』をお届けします!

話し手


株式会社顧客時間
オイシックス・ラ・大地株式会社 
奥谷 孝司 氏
1997年に良品計画へ入社。カテゴリーマネージャーを経て2010年にWEB事業部長に就任し、「MUJI passport」をプロデュース。 2015年にCOCOとしてオイシックス・ラ・大地に入社。 2017年にEngagement Commerce Labを設立。 2018年に顧客時間共同CEOに就任。 2020年からLazuli株式会社の顧問としても活躍中。


株式会社セールスフォース・ジャパン
Commerce Cloud Alliances
伊東 祐治 氏
2005年に広告会社系Slerにて米国キャンペーンマネジメント製品のマーケット開拓・セールスから導入・運用コンサルまで幅広く手がける。2011年に日本IBMに移ったのち、マーケティング・マーケティングオートメーション関連プロダクトのセールス・マーケティングのプロダクトリーダーとして従事。2015年にDemandwareに入社、セールスフォースからの買収後はCommerce Cloudのアライアンスを担当。


メグリ株式会社
代表取締役 田代 健太郎
2007年に株式会社ランチェスター(現:メグリ株式会社)を創業。2010年、ANA(全日本空輸)のアプリ開発に携わったのを皮切りに、2013年には「無印良品」のアプリ「MUJI passport」を立ち上げから支援。2017年に独自のアプリマーケティングプラットフォーム「EAP」をリリース、2020年に名称を「MGRe(メグリ)」に刷新し、SaaS型アプリマーケティングプラットフォームとしてリブランディングを実施。オンワードホールディングスやパタゴニアなど小売業の公式アプリを多く手掛ける。


記事のポイント

● 従来のコマースプラットフォームとヘッドレスコマースはトレードオフの関係にある

● 企業は、カスタマージャーニー全体を連携させ一貫した購買体験(エクスペリエンス)を提供することが重要

● DXを進める上でバックエンド側の整備はとても重要


はじめに

今回は、「OMOを成功させるリアルなお話」をテーマにしたトークセッションをお届けします。
具体的な事例も出てくるので、ぜひ最後までご覧ください。


市場が熱狂する「ヘッドレスコマース」

伊東さん 先ほどの奥谷さんのお話(※1)の中で、顧客とどこでもつながっていることの重要性を学びましたが、現在、『ヘッドレス』というキーワードが盛り上がりをみせているのをご存じでしょうか?

セールスフォースのレポートによると『ヘッドレスアーキテクチャ(※2)を導入していない企業の80%が、今後2年以内に導入する予定。かつ、すでにヘッドレスアーキテクチャを導入している75%のリーダーが、ヘッドレスによってより迅速に変更を行うことができる』と報告しています。

これを理解するために、『ヘッドレスコマース』の紹介をしたいと思います。

※1 奥谷さんのお話:奥谷さんのお話に関しては、こちらのセミナーレポート第1部と第2部を参照。
第1部:【最新】米国の小売業事例から見る「買物価値」
第2部: オンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式

※2 ヘッドレスアーキテクチャ:システムにフロントエンドを含まず、機能をAPIで提供することで、フロントエンド改修の自由度を高めたり、新しいチャネルに対応したフロントエンドの開発を容易にしたりするアーキテクチャのこと。


ヘッドレスコマースとは

伊東さん ヘッドレスコマースとは、フロントエンド (※1) とバックエンド(※2)がそれぞれ切り離され、API(※3) を介してつながっているシステム構成のことです。

旧来、よく見られたECシステムは、フロントエンド部分とバックエンド部分のシステムが切り離されておらず、一体化していました。ちなみに、このように分割されていない1つのモジュールで構成された仕組みを、通称『モノリシ(モノリシック)』と呼びます。

一方、ヘッドレスコマースは、フロントエンド部分とバックエンド部分のシステムが切り離されており、APIで連携する仕組みです。

■参照:セミナー資料より


コマースプラットフォームとの違いは? 

伊東さん ヘッドレスコマースについておさらいをしましたが、従来のコマースプラットフォームとヘッドレスコマースはトレードオフの関係にあることをご紹介します。

従来のコマースプラットフォームは、『パッケージが出来ているため素早い導入が可能』『継続的な新機能の追加がある』などのメリットがある一方、『柔軟性に欠ける』というデメリットもあります。

また、ヘッドレスコマースは、『柔軟なデザインや機能の実装が可能』という大きな特徴をもつ一方で、『運用コストが高い』『テクニカルスキルが必要』というハードルがあるのも事実です。

奥谷さんは、このあたりをよく現場で垣間見ていますか?

奥谷さん そうですね。コマースプラットフォームもヘッドレスコマースも、どちらにも良いところがあります。
選ぶ際は、システムの良し悪しに引っ張られるのではなく、『どこにいてもお客様と繋がるにはどうすればよいか』を考え、それを実現できるものを選ぶことが重要だと思います。

また、顧客理解というところで言うと、ID連携をしてしっかりと1人のユーザーを一元管理することが大切です。
システム上でAPI連携をしていたとしても、IDを紐づけて一元管理ができないと、顧客理解も深まりません。

田代 企業様の中には、顧客とのつながりを深めるためのビジネスサイドとシステムサイドの軸が、一致しているようで一致していない事がよくあると感じています。
逆に、この辺りがうまくいっている企業の特徴は、何かありますか?

奥谷さん 特徴としては、トップ経営者がどこまでプロジェクトにコミットしているか、という点がありますね。
また、お客様目線でシステムを構築できているか、というのも重要だと思います。例えば、どれだけ高度なシステムを構築しても、結果的に現場での接客対応がうまくいかなければ意味がありません。
現場の様子を見ながら、顧客目線に立ったシステムにチューニングしていくことが大事です。


デジタルファーストの時代に求められる「カスタマージャーニー」

伊東さん 話は変わりますが、2020年以降、顧客が『デジタルファースト』となっている傾向があります。
これは、『デジタルのみ利用する』という意味ではなく、『デジタルを優先する』ということです。

デジタルファーストの顧客は、WEBサイト・アプリ・SNSなど複数チャネルを利用し、買物をします。
店舗やレストランといったオフラインでの購買体験においても、スマートフォンでQRコードをスキャンすれば商品やメニューが見られるなど、デジタル化される状態を期待しています。

このように、デジタルファーストの顧客の特徴のひとつは、デジタルを優先的に利用しながら複数チャネルで購買体験をしているという点です。

よって、デジタルファーストの顧客が増加傾向にある今、企業はカスタマージャーニー全体を点ではなく線で見たうえで、一貫した購買体験(エクスペリエンス)を提供する必要がある、ということです。

この内容を踏まえ、次に現在のコマースリーダーの課題について紹介します。

コマースリーダーが抱える課題

伊東さん コマースリーダーの目下の課題は、カスタマージャーニーのあらゆる段階・接点で顧客とつながることです。
かつ、つながりさえすればいい訳ではなく、企業とのつながりに価値を感じてもらうことがとても重要です。その価値は、プロダクトの魅力や従業員の対応力などから生まれてきます。

奥谷さん 本当にそうですね。カスタマージャーニー全体を通して、企業と繋がることの価値をどのタッチポイントでどのように伝えるか、戦略的に練っていく必要がありますね。

あらゆる接点で顧客とつながる
■参考:セミナー資料


アプリ開発のポイント:情報整理ができて初めて顧客体験を向上させられる

伊東さん ここまで、ヘッドレスコマースの概要からデジタルファーストの顧客についてご紹介する中で、カスタマージャーニー全体を見越した戦略が重要だとお伝えしました。
MGReさんでアプリを制作する中で、うまく開発が進んだ企業様の特徴などありますか?

田代 そうですね。アプリ開発にあたってシステムをどうするか、というお話以前に、お客様にどういった体験を提供したいかが明確にされている特徴があります。
ある企業様では、社内で様々な部署を巻き込んでブラッシュアップされており、開発がスムーズに進みました。

どのようなシステムにするか、というのはMGRe側でしっかりと決められます。しかし、提供したい顧客体験がどのようなものか、というのは企業様でないと分からない部分があります。

そういった意味で、アプリのご相談時にカスタマージャーニーがほぼ仕上がっている企業様は、設計も含めてアプリ開発がとてもスムーズでした。

奥谷さん カスタマージャーニーから逆算しながら、顧客目線で設計することは重要ですよね。
また、在庫の可視化を進めていないと、なかなかオムニチャネルを進めていくのは難しいと感じます。

田代 本当にそうです。ワンID(※)とあわせて、在庫に関してどこに何がどれくらいあるのかを管理するのは、アプリをはじめDXを進めていくうえで非常に重要なポイントだと思います。

奥谷さん DXを進める前に、顧客IDや在庫管理のための商品マスタなどバックエンド側の整備は重要です。
バックエンド側が整って初めて、顧客体験を向上させるアプリの制作に進める訳ですね。

※ワンID:ここでのワンIDとは、オンライン顧客IDをオンライン・オフライン共通のIDとして活用することを指す。詳しくはセミナーレポート第2部「オンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式」を参照。


さいごに

今回は、『企業と顧客の「つながり」を強調するには?』をテーマにしたトークセッションをお届けしました。
全3回にわたるセミナーレポートはいかがでしたか?
最後に、各回のポイントを以下にまとめておきます。

<第1部のポイント>
・「Amazon Fresh」最大の特徴は、テクノロジーとオフラインをかけ合わせた顧客体験を提供する点
・今後の小売業には買物価値×テクノロジーの適正なバランスを見極めることが求められる
・適切なテクノロジーレベルを見極めるためには「Human touch technology(ヒューマンタッチテクノロジー)」が重要
👉第1部:【最新】米国の小売業事例から見る「買物価値」

<第2部のポイント>
・顧客とのつながりを強める3つの要素は【1】カスタマージャーニー、【2】顧客とつながりつづけるための行動提案、【3】オンライン顧客ID
・顧客とのつながりを強めるためにはオンライン顧客IDが重要
・DXは、従業員(主に店舗スタッフ)とお客様の両者にとって有用なデジタル体験を提供することで成功に近づく
👉第2部: オンライン顧客IDの重要性とDXを成功に導く方程式

<第3部のポイント>
・従来のコマースプラットフォームとヘッドレスコマースはトレードオフの関係にある
・企業は、カスタマージャーニー全体を連携させ一貫した購買体験(エクスペリエンス)を提供することが重要
・DXを進める上でバックエンド側の整備はとても重要

ご興味のある方は自社のDXを進めるヒントとして、ぜひこちらもあわせてご参考ください!